変な校長


今日から授業は全て修学旅行の話し合いと学園祭の準備に変わり、俺は国内での修学旅行を選び、美山も俺が国内を選んだと知って同じ国内コースを選んだようだ。


「はーい!それじゃ、国内コースの人は図書室に移動してくださーい」


川崎先生の指示で一人で教室を出ると、なぜか桃が付いてきた。


「なんだ?」

「私も国内コースにしました」

「そうなのか⁉︎さすが桃!分かってるな!」

「早く行きましょう。美山さんも図書室に居るはずです」

「だな!」


桃は優しさで国内を選んでくれたんだろうな!なにも言わなくても分かる!


そして図書室にやってくると、見事に美山しか居なく、国内コースを選んだのは俺達三人だけだった。


「桃ちゃんも国内コース⁉︎」

「はい」

「やったー!三人で行けるね!」

「よかったな!それより、図書室に行けって言われたけど、なにすればいいんだ?」

「今から先生が来るんじゃない?」

「国内コースの担当は川崎先生ですよ。今から来ると思います」

「おー、気楽でいいな」


すると、川崎先生が図書室にやってきて、ホワイトボードの前に立った。


「三人かー!それじゃ、国内でどこに行きたいか話し合ってくれるかな?できれば一時間以内で!」

「分かりました」

「その間、私は教室でいろいろやることあるから、一時間後にまた来るわね!もし、すぐに決まったら、パソコン室でパンフレットとかコピーして、当日の予定を立ててね!」

「はい!」


川崎先生が教室に戻り、さっそく三人での話し合いが始まった。


「俺はどこでもいいんだけど、美山は行きたいところとかあるか?」


これなら、美山のお金と相談しながら場所を決められる!


「国内ならどこでも大丈夫かも!」

「桃は?」

「私は北海道で海の幸を食べたいです」

「いいね!北海道がいい!」

「よし!それじゃ北海道ってことで、パソコン室行くか!」

「うん!」


行きたい場所があっさり決まり、パソコン室で北海道のパンフレットをコピーして図書室に戻ってきた。


「これやりたいかも」

「どれどれ?」

「ラフティング。ゴムボートみたいなのに乗って、川を降るんだってよ。スリル満点らしい!」

「やろ!文月くんがしたいことは全部!」

「桃は?やりたくなかったら言ってくれ。三人しかいないんだから、みんながやりたいやつじゃないとな」

「やりたいです」

「んじゃ決まり!」

「海の幸も」

「もちろん決まりだ」

「ありがとうございます」

「これは?ロープウェイでクマ牧場に行けるんだって!100頭ぐらいいるんだってさ!」

「熊‼︎」


桃が熊を見たそうに勢いよく立ち上がり、クマ牧場も行くことになった。


「行くのはいいけど、生徒会室にクマいるじゃんか」

「あのフィギュアはカッコいい!だから本物もカッコいい!」

「そ、そうか」


それからも話し合いは続き、戻って来た川崎先生とも相談して、現地に電話をかけたりを繰り返して順調に予定が決まっていった。


「よーし!終わったー!」

「お疲れ様!それじゃ学園祭の準備に取り掛かって!」

「あぁ‥‥‥ダル」

「ダルじゃありません!」

「はーい」

「二人のクラスはなにやるの?」

「占い」

「へー!楽しみ!」

「みんな本を見ながら喋るだけだからつまらないぞ」 

「でも、文月くんに占ってもらう!オカルト部ではなにか出すの?」

「クラスでの出し物が占いで、私も興味があるので、今回は占いに力を入れます」

「そうなんだ!会長はまたマジックらしいよ!」

「あの、力技でスプーン曲げるやつか。でも評判は良かったからな。美山のクラスはなにするんだ?」

「教室内に自作のジェットコースター作るの!」

「大変そうだな。頑張れよ」

「うん!」

「はいはい!お喋りはそこまで!」

「はーい」


学園祭の準備と言っても、しばらくは占いの本を見て勉強するだけで退屈だ。


そして放課後になると、桜橋先輩は川崎先生に聞いたのか、北海道のいいところを嬉しそうに語り始め、俺達もそれをニコニコしながら聞いている時、生徒会室に茶色いスーツを着た、白髪がよく似合うおじさんが入ってきた。


「ど、どちら様ですか?」

「双葉くん、失礼よ」

「え?」


地位の高い人ってことは間違いない。凄まじいオーラだ‼︎


「今の三年生以外の生徒と会うのは初めてだね。私は、こーちょーどぅえす‼︎」

「校長⁉︎」


しかもなんかおちゃめ⁉︎


「お久しぶりですね。今日はどうしました?」

「なんかー、生徒会が美少女揃いになったって聞いてー、見に来たんだけど〜、一花さん以外普通じゃないか‼︎」

「普通じゃないわ‼︎」

「男は黙っておれ‼︎」

「はい‼︎」


なんだこの校長‼︎見た目のイメージと違いすぎる‼︎


「やっぱり一花さんは素晴らしい!」

「ありがとうございます」

「是非私の孫との子を産んでもらいものだ」

「そのお話はお断りしたはずです」

「ご両親とも話をしてね、是非と言っていたぞ?」

「勝手に決められては困ります」

「こ、校長先生!」

「君は、美山杏奈さんだったかな?どうしたんだい?」

「会長は文月くんと付き合ってるので!」

「ん?み、美山?」

「双葉‥‥‥文月‥‥‥」

「は、はい」

「今すぐ別れなさい」

「いや、あの」

「それに一花さん、この生徒と付き合っていても、卒業後は」

「これ以上余計な話をしないでもらいたいですね」

「失礼した」


美山が話を合わせろと言わんばかりの目力で見てくる‥‥‥


「俺は、わ、別れません」

「幾ら欲しい」

「え」

「幾らで別れるのかと聞いている」


絶対払えない額を言って乗り切るしかないか。


「一兆」

「明日までに用意する。それでは」


用意できちゃうの⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎


校長先生が生徒会室を出て行くと、頬を赤くした桜橋先輩に勢いよく胸ぐらを掴まれた。


「な、なんですか⁉︎」

「お金を積まれれば私なんて要らないって言うの⁉︎」

「違いますよ‼︎」

「それに、私達が付き合ってるの今知ったわ!なんでちゃんと言ってくれないのよ!」

「付き合ってないし‼︎」

「え?」

「美山が桜橋先輩を守るためについた嘘に乗っかっただけですよ!」

「し、知ってたし」


絶対知らなかったやつだ。


「会長、まさか婚約者いたりしませんよね」

「いないわよ!そういう話はたくさん来るけれど、すぐに断ってるもの。まぁ、私からの婚約を断ったのは双葉くんだけだけれど」

「謎のプレッシャー与えないでください。あと、俺以外にも婚約申し込んだことあるんですね」

「ぬ、ぬいぐるみに‥‥‥」

「はい?」

「双葉くんに言うために、ぬいぐるみで練習したの!」

「は⁉︎可愛い‼︎」

「うるさい‼︎」

「なんで⁉︎」

「とにかくどうするんですか!副会長!」

「俺ですか⁉︎」


紬先輩が軽く眉間にシワを寄せて詰め寄ってくる。


「明日、一兆円受け取ったら終わりですよ?まさか、受け取ったりしませんよね?」

「受け取らないですよ!」

「あまり心配しなくて大丈夫ですよ」

「なんだ桃、なにか考えがあるのか?」

「任せてください」

「わ、わかった」


桃はいざと言う時、本当に役に立つ人だ。桃を信じよう。

それに、桜橋先輩が他の男と結婚とか‥‥‥なんかな‥‥‥


「楽しい雰囲気が台無しね。伊角さん、鼻フックしながらグラウンドを走りなさい」

「なんでですか‼︎悪趣味‼︎」

「桜橋先輩みたいな人が鼻フックしたほうが面白いですよ」

「嫌よ!」

「え、俺が望むことなら、なんでもするんじゃ」

「‥‥‥」

「冗談ですから泣きそうにならないでください!」

「あー、副会長が会長泣かせたー」

「ギリギリセーフだから!」

「ぶひー」


桃は場を和ませるために、自分で鼻を上げて豚の真似をしたが、まさかの全員ノーリアクション‥‥‥


「さて、仕事にしましょう」 

「そうですね」

「これって‥‥‥泣いてもいいやつですよね‥‥‥」



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