おっぱいで色んなこと!


「2年C組、双葉文月さん。至急、生徒会室へ来てください」 


初めて校長と会った翌日、放送で生徒会室に呼び出され、朝から嫌な予感に襲われながら生徒会室にやってきた。


「やぁ、文月くん」

「‥‥‥嘘だろ‥‥‥」


生徒会室に入ると、校長先生と桜橋先輩がいて、テーブルから溢れ落ちるほどのお札の山が俺の目に飛び込んできた。


「受け取りたまえ」

「い、いらないです」

「約束が違うじゃないか。このお金を用意するのも大変なのだよ?」

「ですが‥‥‥」

「私は約束のお金は用意した。君と一花さんは、たった今から他人だ」


桜橋先輩はやけに落ち着いている。怒ってるのか?


とにかく何か言わなきゃと思ったその時、黒いスーツを着た男性を10人も連れた桃がやってきた。


「二人の関係を一兆円で壊せるとお思いですか?私は二人を守るために一兆飛んで百万円を双葉さんに支払います」

「君にそんなお金が払えるのかい?」

「出してください」

「はい!」  


頭が混乱して汗が止まらない中、スーツ姿の男性達は、次から次へと生徒会室にお金を運び入れた。


「ふむ。文月くんに一兆飛んで二百万を支払おう」

「一兆飛んで三百万」

「一兆飛んで三百五十万」


なんだこの金の詰み合い‥‥‥次元が違いすぎる‼︎‼︎‼︎


「一兆飛んで三百六十万です」


校長はニヤッと笑い、桃を見下した。


「二兆」

「‥‥‥」


桃はポケットから財布を取り出して中身を確認し始めた。


「二兆‥‥‥飛んで一万円‥‥‥」

「私も今支払えるのは二兆飛んで二万が限界だ。あいにく、財布には二万しか入っていなくてね。文月くん」

「は、はい」

「予期せぬライバル出現で、いきなりお金持ちだな」

「俺は‥‥‥俺は‼︎」

「ちょっとどいて」

「鈴穂?」


そう言って、スーツ姿の男性をかき分けてやってきたのは鈴穂だった。


「桃先輩の額に、一万円一円を上乗せする」

「なんだと‼︎校長を敵に回すと言うのか」

「校長だかなんだかしらないけどさ、アンタなんて私からしたらただのオッサンなわけ。それにこれは金の詰み合いでしょ?アンタは勝負に負けた。お金を持って帰りな」

「‥‥‥これだからこの学園は面白い。この金は生徒会の活動費に回すといい。口座に振り込んでおく。迷惑をかけたな」


このレベルの人があっさり負けて、次の手を打たないわけがないとも思ったが、今はなんとか助かった。


すると、桃が連れてきた人とは別のスーツ姿の男性達が入ってきてお金を回収し、校長が立ち去った瞬間、桃はフラフラしだし、鈴穂の体にもたれかかった。


「桃⁉︎」

「お嬢様!」

「大丈夫です。ちょっと怖かっただけです」

「岡村さん」

「はい」

「お金を持って今日は帰りなさい」

「大丈夫ですよ」

「そうだよ!俺は受け取る気はないし、今日は帰ってゆっくりしてくれ」

「平気ですって」

「それよりこの大金、早く安全な場所に‥‥‥」

「鈴穂の言う通りだな」

「そうね。でも、お金の詰み合いは見てて鳥肌が立ったわ!良いものを見せてくれてありがとう」

「は、はい!」

「松下さんも」

「どういたしまして」

「だけれど、小切手でよかったのに」

「現金の方が、圧で勝てると思ったんです」

「なるほどね。岡村さんの付き人さん?」

「はい!」

「騒ぎになる前に、お金を持って学園を出てくれますか?岡村さんの体調はこちらで責任を持ちます」

「分かりました!」


そして、スーツ姿の男性が帰っていった直後、美山と紬先輩が頭に鍋を被り、両手にお玉を持って生徒会室に乗り込んできた。


「大丈夫ですか!」

「文月くん!助けにきたよ!」

「遅いわ」

「ありゃ?」

「にしても、鈴穂はなんで来てくれたんだ?」

「ピンチになったら、ここだってタイミングで出てきてって、桃先輩にお願いされてたの」

「すげーな。そうだ、桜橋先輩」

「なに?」

「二人になにかお礼した方が良くないですか?」

「生徒会の活動費に使えと言われたお金で、なにかしたいことしなさい」


女子高生が二人で一兆使うとか、人生崩壊するだろ。


「会長の手作りオムライスが食べたいです」

「そんなのでいいの?」

「はい」

「松下さんは?」 

「欲しい雑誌あるから、一兆円から800円だけ欲しい」


二人とも現実的すぎる‼︎俺なら一万円はもらおうとするぞ‼︎


「私の財布からで申し訳ないけど、はい」

「ありがとう!」


ちょっと待てよ?鈴穂って一万円持ってるはずだよな。800円の雑誌ぐらい自分で買えよ‼︎


「それじゃ岡村さん、調理室に行きましょうか」

「はい!」

「にしても、一兆円とか初めて見たわー」

「双葉くん?」

「はい?」

「校長と岡村さんが持ってきたのは一億ぐらいよ?一兆はあんなものじゃないわ」

「マジかよ‼︎てか俺、騙されてたの⁉︎」

「そうね。いつか一兆円の山を見ることがあれば、次は騙されないように目に焼きつけなさい」

「見る機会なんてないですよ‥‥‥」


それから桃と桜橋先輩は調理室に向かい、他のみんなは各自教室に戻った。


桃がいないと、教室では基本ボッチな俺は、ずっと一人で占いの本流し見している。

昼休みになっても桃が戻って来なく、気になって調理室に行ってみると、机にはオムライスを食べた後の二枚の皿が置かれてあり、桃が机に右頬を付けて寝ていた。


「シー」


桜橋先輩は優しい表情で桃の頭を優しく撫でている。


「寝てるんですか?」

「疲れちゃったみたい」

「‥‥‥桃、泣いてたんですか?」


桃の目には涙の跡のようなものが残っていて、それを見ると、何故かキューっと胸が痛む。


「私と美山さんと双葉くんがバラバラになっていた時のこと、涙ながらに打ち明けてくれたわ」

「‥‥‥」

「岡村さんも、いろいろ責任を感じていたみたいなの。頬にキスしたことも謝られたわ。謝らなくたっていいのに」

「そ、そうなんですか」

「双葉くん」

「はい?」

「キス‥‥‥させて」

「え‥‥‥?」

「やっぱりなんでもないわ」

「そ、そうですか。あ、そ、そうだ、今日から放課後は、修学旅行が終わるまで生徒会室に顔を出せません」

「いろいろ準備があるものね」

「はい」


恥ずかしいのか、悲しんでいるのか分からないその表情を見て、また俺の胸は痛んだ。


「な、なんか私らしくないわね!」

「そうですよ!」

「私ね、双葉くんのために胸のマッサージを始めたの!」

「え、何故」 

「大きくなったら、胸でいろんなことしてあげられるじゃない!」

「もうできるぐらいありますよ!」

「なら試してみましょう!調理室は誰も来ないし、数分で出してくれれば大丈夫よ!」

「なにを⁉︎」

「さぁ!リラックスして!」

「も、桃がガン見してます‼︎」

「‥‥‥」

「‥‥‥」

「えぇ〜⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎」


桜橋先輩は目を覚ました桃の首を叩いて気絶させてしまった。


「さっきまで優しく頭撫でてた相手に!なにやってんの⁉︎」

「双葉くんの気持ちがる姿を見たい♡私で満たされる双葉くんが♡」

「付き合ってからでお願いします‼︎」

「だって、まったく返事くれないじゃない!」 

「お、俺は桜橋先輩がっ‥‥‥あ、食堂行かなきゃ、美山が待ってるんで」

「ちょ、ちょっと!なんなのよ!」

「じゃ」

「もー!」


俺は桜橋先輩のことが好きだ。だけど、今は付き合いたくない。

付き合ってしまったら、美山がいなくなってしまう気がするからだ。

正直、美山のことだって好きだ。だけど、俺は見てしまったんだ‥‥‥生徒会室の桜橋先輩の机の中に、海外留学の書類が入っているのを‥‥‥二人を失いたくないと思う気持ちは、ただのわがままなんだろうか。

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