イカ臭い
桜橋先輩の誕生日一日前の土曜日、貝殻を使ってアクセサリーを作れないか、絵が上手いというだけで、ハンドメイドとかできそうという安易な考えで紬先輩に電話をかけた。
「もしもし?」
「紬せんぱーい」
「なんですか?今みんなといるんですけど」
「あ、なんでもないです」
「マイハニーに代わりますか?」
「いいです」
慌てて電話を切ったけど、みんなって元生徒会メンバーのことだよな!俺だけ誘われてないとかどういうことだよ!
しょうがない
「鈴穂に頼るか‥‥‥」
さっそく鈴穂に電話をかけると、予想に反してワンコールで電話に出てくれた。
「鈴穂ちゃ〜ん」
「は?ちゃんってなに。きも」
「おい。まぁいいや、ちょっと頼みたいことあってさ」
「頼みたいこと?」
「鈴穂ってハンドメイドとかできる?」
「前にピアスなら作ったことあるけど」
んー、桜橋先輩はピアスしてないしな。
「他には?」
「ないかな。なにか作ってほしいの?」
「小さくて綺麗な貝殻があるんだけど、アクセサリーかなんかにできないかなって」
「それならストラップとかは?」
「作れるか?」
「できなくはないけど」
「マジか!んじゃ作ってくれ!今から学園行くわ!」
「はぁ⁉︎土曜日なんですけど!」
「んじゃファミレスでもいく?」
「アンタ、元会長と付き合ってるんでしょ?誰かに見られて勘違いされたらめんどくさいよ」
「んじゃ俺の家来てくれ」
「アンタさ‥‥‥」
「ん?」
「住所送っといて」
「ほーい」
なにかお菓子ぐらい買ってやったほうがいいか。
鈴穂に住所を送り、千円を握りしめて近くのコンビニでジュースとお菓子を買ってきて、部屋で待機していると、だいたい一時間半ぐらい経った頃にチャイムが鳴った。
「はいはーい」
「お待たせ」
「おっ、私服じゃん」
「見るな」
「えぇ‥‥‥」
ザ.地雷みたいな私服だけど、こういう服って可愛いよな。
あと、なに入れんの?みたいなリボンが付いた小さいカバン。中からラムネとかマシュマロ出てきそう。
「上がっていいの?」
「あ、あぁ、部屋に行こうぜ」
「お邪魔しまーす」
「はーい」
鈴穂を部屋に招き入れると、フィギュアが並ぶ棚に釘付けになった。
「へー!やっぱり好きなんだ!」
「うん、最近は全然買ってないけどな」
「いい趣味してるね!」
「‥‥‥おー!分かってくれるか⁉︎」
「え、う、うん」
「まさか鈴穂が理解してくれるとはな!」
「私をなんだと思ってるわけ?」
「性格悪い奴」
「帰る」
「冗談です女神様‼︎」
「そんなんで、よくあの人と付き合えたよね」
「おっしゃる通りです」
「はぁー、とにかく貝殻は?」
「これ。あとお菓子とジュース買ってきたから、好きに食べながら作ってくれ」
「作ってくだ?」
「さい」
「はい」
今日は下手に出るしかない。いや、毎回鈴穂相手だと下手だわ。いつもと変わらない。
それから鈴穂は、お菓子にも手を付けずに集中してストラップを作ってくれた。
「紐にビーズ付けたほうが可愛いよね」
「んじゃ水色と白でよろしく‥‥‥いって‼︎なんで殴んの⁉︎たんこぶできるわ‼︎」
「生意気‼︎」
「ごめんね⁉︎」
怒りながらも、結局水色と白のビーズを付けてくれ、20分ほどでストラップが完成してしまった。
「できた!」
「すげー!ストラップになると一気に可愛いな!」
「喜んでくれた?」
「おう!ありがとうな!」
「どういたしまして!んで、双葉先輩さ」
「なんだ?」
「今、どれだけイバラの上を歩いてるか分かってる?」
「なんのことだ?」
「もっちんに聞いたけど、美山先輩を助けたいんでしょ?」
「あー、桃か。そうだけど」
「なのに桜橋先輩と付き合った。別に悪いことじゃないけど、桜橋先輩が海外にいかないように、いや好きだからなんだろうけど、付き合ったわけでしょ?」
「うん」
「それで美山先輩も助けるとか欲張りすぎ。そんな簡単に二人とも自分の元から居なくならないようにできると思ってる?」
「思ってない」
「は⁉︎」
「現状はな。俺が生徒会長になれなきゃ無理だ」
「んじゃどうするの?選挙結果が出るの明後日なんだよ?」
「不正できないかな」
「バカ?」
「無理だよなー」
「当たり前でしょ」
「まぁ、なんとかするよ。無理って思っても、諦める気はないから」
「ふーん。やっぱりカッコいいね」
「ふぁ?」
「私帰るわ。この部屋イカ臭いし」
「え?マジ?」
「さぁ?」
鈴穂は帰って行き、俺は速攻で消臭剤を買いに行った。
そして桜橋先輩の誕生日当日、俺は桜橋先輩をデートに誘うために電話をしてみることにした。
「もしもーし」
「おはよう!」
「おはようございます!今日、よかったら二人で遊び行きません?」
「え!行きたいわ!」
よし!デートの最後で貝殻のストラップを渡すぞ!
「でも、お父さんとお母さんが日本に来ていてね」
「え」
「双葉くんに会いたいって」
「え、無理」
「だから、前に来たことがる、大きいほうの私の家に来てちょうだい!住所送っておくわね!」
「いや、あの!」
電話を切られてしまい、逆に、前に一度だけ行ったことのある桜橋先輩の元の家に呼び出されてしまった。
住所を送ってもらって、全財産を使ってタクシーでやってきたが、この家‥‥‥
「どこにチャイムのボタンあるんだ」
ボタンを探して家の前をうろちょろしていると、家から桜橋先輩のお母さんがニコニコしながら出てきてくれた。
「久しぶりね双葉くーん!」
「お、お久しぶりです」
「一花とお付き合いしてるんですって?」
「はい。すみません」
「一花の身体のご感想は?」
「ま、まだなにもしてません!」
「まったくー、ダメよ?」
「え?」
「男の子ならやることやらなきゃ!」
自分の娘が彼氏に抱かれることに前向きな親とか、俺は初めて見たよ‥‥‥
「さぁ、一花も居るから入って?」
「は、はい。お邪魔します」
桜橋先輩のお母さんは割と好きだ。デリカシーがないけど、優しい人だって俺でも分かる。それに桜橋先輩に負けないくらい美人だし‼︎
ただ、お父さんは怖い!できれば会いたくないけど、俺をこの家に呼んだのは‥‥‥そういうことだろうな。
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