えっちしちゃった♡
「一花!双葉くん来たわよ!」
お母さんが桜橋先輩を呼ぶと、早歩きで歩いてくる足音が聞こえ『会えて嬉しい』という言葉が聞こえてきそうなほど可愛らしい笑みを浮かべて桜橋先輩がやってきた。
「いらっしゃい!」
「お、お父さんは?」
「庭で葉巻吸ってなかった?」
「いなかった気がしますけど」
「私はいつから君のお父さんなんでしょう」
「わっ‼︎」
「あはははは!」
気づけば真後ろに桜橋先輩のお父さんが立っていて、驚く俺を見て桜橋先輩笑うし、マジで心臓に悪い!
「さぁ双葉くん、話をしようか」
「はい‥‥‥」
やっぱりこうなったか。でも桜橋先輩は笑ってるし、あまり深刻な話ではないのか?
そのまま広いリビングに移動し、桜橋先輩と一緒にソファーに座り、桜橋先輩の両親が目の前のソファーに並んで座った。
「双葉くん。なにか私に言うことはないのかね?」
「‥‥‥ないです」
「私に嘘をついただろ?」
「いえ‥‥‥」
「また嘘をつくのかい?」
「あの時は本当に付き合ってなかったんですよ」
「ん?あれ?いつから付き合ってるの?」
「つい最近です」
「あはは!勘違いしてたよ!で?なんで付き合ってるんだい?」
えぇ〜‥‥‥今の、全部解決の流れでしょ〜‥‥‥桜橋先輩のお母さんはニコニコしてるだけでなにも言ってこないし‥‥‥
「やっぱり、す、好きだから?ですかね」
「すーきーだーかーらー⁉︎はー⁉︎なんでやねーん‼︎」
「大阪出身ですか?」
「舐めとんかワレ‼︎」
桜橋先輩のお父さんは勢いよく立ち上がり、テーブルに片足を上げて俺を睨み、もう俺の体の震えが止まらなくなってしまった。
「貴方、座りなさい」
「はい」
やはり母強し‼︎
「双葉くん?」
「はい!」
「一花とお付き合いすることの意味、分かってるかしら?」
「意味‥‥‥ですか?」
「私達桜橋家は、それなりに有名な家族なの。もし双葉くんと一花が別れて、一花がまた他の男性とお付き合いをする。そうすると良くない噂が広まる可能性もあるのよ?」
「双葉くんとは別れないわ。他の男性なんて興味ないもの」
「双葉くんに聞いているの。今はお互いがお互いに夢中でも、恋は冷めるから恋なのよ」
この人、ニコニコしながら怖いこと言うな‥‥‥でも矛盾してる‥‥‥
「だとしたら、お二人はなぜ結婚しているんですか?」
「恋心は冷めてしまったけれど、私達は愛し合っているからよ」
「それなら俺達も」
「まだ人生の地獄も知らないような人間の言う愛してるに、どれほどの重さがあるかしら」
「‥‥‥地獄なら知ってます」
「どんな?」
「人の心に必ずある、地獄みたいに怖くて醜いものに晒されたことがあるので」
桜橋先輩のお母さんはニコニコしなくなり、お父さんも真剣に話を聞いている。
「‥‥‥自分の中の地獄も知っています。憎い相手が死んでしまえばいいのにって思ったり、死にたいって思ったり‥‥‥当時は本当に全てが嫌でどうしようもなかったですが、今は、そういう経験ができてよかったって思ってます」
「そう思えるようになったのは何故?」
「周りに人が居たからです」
「一度は人が嫌いになったんじゃないかしら」
「なりましたよ。人が嫌いなのに、人に救われました。変ですよね」
「その救ってくれた人の中に、一花もいたのかしら?」
「はい!むしろ、桜橋先輩と話すようにならなかったら、いろんな人と話すきっかけもなかったですし!」
「そう。素敵な話が聞けたわ!過去の過ちや心の痛みは、今の素敵な自分を作り出すものよ」
「ありがとうございます」
前に、桜橋先輩も似たようなこと言ってたな。さすがだ。
「一花に対する、好き以外の感情はある?」
「感情って言っていいのか分からないですが、いっぱい笑顔にしたいって思ってます」
「あらー?一花、そんなに嬉しそうな顔してどうしたのー?」
「一花!なんで嬉しそうなんだ!」
「うるさいわね!普通よ!」
「ごめんごめん!それで双葉くん、他には?」
「んー、一つ決めてることがあるんですけど」
「教えて?」
「俺と桜橋先輩は、喧嘩っていう喧嘩は多分一回しかしてないと思うんですけど、もしもギクシャクすることがあればすぐに謝ります!たとえ俺が悪くなくてもです!」
「謝ればいいと思ってるの?」
「桜橋先輩は俺の味方ですよね⁉︎大丈夫ですよね⁉︎」
ここにきて桜橋先輩の『謝ればいいと思ってるの?』はいろんな意味が込められてそうで嫌だ!あと、2人の前でやめて!
「双葉くん」
「はい」
お父さんは俺の名前を言い、ゆっくり立ち上がった。
「きーにーいったー‼︎‼︎‼︎」
「はいー⁉︎」
「男とはそうあるべきだ!君はよく分かっている!愛とは妥協だ!妥協しなきゃやっていけない‼︎」
「あ、あのー‥‥‥」
「なんだい?」
「2人の目が死んでます」
「ち、違うんだ。決してお前が悪いのに謝ってやってるとか、そんな生意気なことは思ってない!」
「ふふふふふ」
「ち、ちなみに俺もそういうつもりで言ったんじゃないですからね!」
「双葉くんが謝る時は妥協した時なのね。覚えておくわ」
「‥‥‥」
「さぁ、おバカなお父さんはほっといて、お母さんの部屋でエッチなDVDでお勉強しましょう!」
「お母さん⁉︎」
「一花は今日で18禁解禁じゃない♡双葉くんとのお付き合いは認めてあげるから、その分一花も頑張らなきゃ♡」
「‥‥‥頑張る!」
おいおいおい‥‥‥
桜橋先輩はワクワクしながらニコニコと笑みを浮かべるお母さんに連れて行かれてしまった。
そしてお父さんは真っ青な顔でソファーに座った。
「女って怖いよな」
「ですね」
「隠していたDVDなんだ‥‥‥ああやってさりげなく知ってることアピールしてくる。一花はあいつに似ているところがあるからな、気をつけるんだよ‥‥‥」
「はい‥‥‥」
「そうだ‥‥‥私が付き合いでキャバクラに行った日の話をしよう」
聞きたくない‥‥‥
「色々あってキャバクラに行って朝帰りした日のことだ。48時間鍵を開けてくれなかった」
「凄いですね‥‥‥」
「やっと開けてくれて、最初になに言われたと思う?」
「分からないです」
「あいつは笑顔で言ったんだ『足があるから女の子に会いに行くのよね。右と左、選んでいいわよ』って」
「うわ‥‥‥」
「そのあと私の隣に座りながらパソコンを使って、通販サイトでチェンソーを買う瞬間を見せつけてきた」
「よく無事でしたね」
「謝りまくって、抱いたら仲直りできた」
「‥‥‥」
なんか凄いクズ感溢れてる‼︎
「キャバクラ行っただけで浮気はしてないんですよね?」
「そうなんだよ!分かってくれるか⁉︎」
「はい!」
「でもな、人によってはキャバクラは浮気なんだよ!双葉くんは行っちゃダメだぞ!」
「行きませんよ!桜橋先輩しか興味ないので!」
「はぁ⁉︎ガキが生意気言うんじゃねー‼︎」
「どうしてそうなるんですかー‼︎」
それから喜怒哀楽の激しい桜橋先輩のお父さんの話を永遠と聞き、気づけば夕方になっていた。
「お待たせ!誕生日プレゼントでいっぱい貰っちゃったわ!」
「俺様のコレクションが〜‼︎‼︎‼︎」
「あら貴方、私がいるのにあのDVDが大切なの?」
「いや、あんなのいらない‼︎」
「そうよね♡」
「はい‼︎」
こうはならないようにしよう‥‥‥てか、桜橋先輩に押し付けないで⁉︎
結局、2人に関係を認めてもらえ、今度改めて俺の家に挨拶しにくることになり、俺と桜橋先輩はいつもの桜橋先輩の家に帰った。
「入って!」
「時間も時間ですし、渡したいもの渡して帰ります」
「渡したいもの?」
俺は財布に入れていた貝殻のストラップを取り出して、桜橋先輩に渡した。
「誕生日おめでとうございます!」
「素敵!とても綺麗だわ!」
「鈴穂に頼んで作ってもらったんです!」
「松下さん?」
「は、はい」
なんか笑顔が消えたんですけど⁉︎
「2人で会ったの?」
「そうなりますね‥‥‥」
「入りなさい」
「帰ります‼︎」
「来なさい」
「はぃ‥‥‥」
明らかに怒ってる‼︎チェンソーで足切られませんように‼︎
そのまま桜橋先輩の部屋に連れて行かれ、俺は勢いよくベッドに倒されて、素早い手つきでベルトを取られてしまった。
「なんでベルト⁉︎」
「私の愛が足りないから2人で会ったりしたのよね?」
「プレゼントのためです!」
「いっぱい勉強したから任せて♡」
桜橋先輩は、なぜか顔が赤くなり、息遣いも荒くなり始めた。
「いっ‼︎」
「ほら♡気持ちいいでしょ?♡」
「痛いです‼︎ストップ‼︎」
取られたベルトで体を叩かれて、痛みで床を這いつくばって逃げようとするが、全然やめてくれない。
「双葉くん♡大好きよ♡恥ずかしがらないで♡?」
「やめてください〜!はっ‥‥‥」
その時、俺は見てしまった‥‥‥
桜橋先輩が貰ったDVDのジャンルは、全てM男物のDVDだったのだ‥‥‥
「これがいいんでしょ♡?踏んであげるから脱いで仰向けになりなさい♡」
「嫌ですよ〜‼︎」
その後、なんとか痛みを20分ほど耐え抜き、桜橋先輩は疲れたのかベルトを返してくれた。
「はぁ♡えっちしちゃった♡」
「してねーよ‼︎」
やっぱり分かってはいたけど、改めて俺の彼女がクソアホだということが分かった。
それにお腹に貼って電気が流れるやつ使った時から思ってたけど、この人絶対S。
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