セフレになりましょう!


桜橋先輩から呼び出され、なるべく待たせないように自転車で急いで桜橋先輩の家に向かい、桜橋先輩の家に着いてチャイムを押すと、桜橋先輩は制服姿で扉を開けた。


「夏休み中も制服ですか?」

「さっきまで学校にいたのよ」 

「そうなんですか。で、俺はなんで呼ばれたんですか?」

「とにかくあがって!」

「はーい」


家に入ると、廊下まで冷房が効いていて、かなり涼しい。


「私の部屋に行きましょ」

「ちゃんと写真剥がしました?」

「やっぱり見てたのね」 

「あっ、いや‥‥‥」

「ちゃんと剥がしたわよ。クリアファイルに入れて大切に保管してるわ」

「気持ち悪いんですけど」

「酷いこと言うわね。さぁ、入っていいわよ!」


部屋に入ると、ベッドにはニンジンの抱き枕が置かれてあり、ニンジンを抱きしめながら寝ている桜橋先輩を想像して一瞬ニヤけてしまった。


「今お茶を出すから、座って待っててちょうだい」

「お構いなく〜」


桜橋先輩と二人でいるのも、話すのもすっかり慣れちゃったな。


殺風景な部屋を眺めながら桜橋先輩を待っていると、二つのガラスコップに麦茶らしきものを入れて持ってきてくれた。


「外は暑かっただろうから、遠慮しないで飲むのよ」

「ありがとうございます!」

「嬉しそうね」

「やっぱり夏は麦茶ですよね!で、何入れました?」

「ななっ、なにも?」

「んじゃ底に沈んでる粉みたいなのはなんですか⁉︎溶けきってませんけど!」


桜橋先輩は何も喋らなくなったが、明らかに動揺して目が泳いでいる。


「身の危険を感じるので帰ります‼︎」

「危ないものじゃないわよ!」

「んじゃなんですか⁉︎正直に教えてください!」

「‥‥‥惚れ薬」

「効くわけないじゃないですか」

「そんなわけないわ!ちゃんとお店で買ったもの!」

「どこで買ったか当ててあげましょうか」

「言ってみなさいよ!」

「雑貨屋のパーティーグッズコーナー」 

「‥‥‥ふん!」

「当たりかよ‼︎それくらいなら、ただの粉でしょうし飲みますよ」


そして麦茶を一口飲むと、まだジョークグッズだと分かっていないのか、期待に満ちたワクワクした表情を見せた。


「どう?私のことどう思う?」

「アホ」

「なんでよ!」

「アホが買ったアホ薬飲んだからですかね」

「でも、私は成績一位よ?」

「テスト科目に常識って科目があれば下から一位ですよ」 

「本当に失礼だわ‼︎」

「わっ!」


桜橋先輩が怒って立ち上がった時、麦茶の入ったコップに手が当たり、俺のズボンに麦茶が溢れてしまった。


「ごめんなさい!脱いだ方がいいわよ!」

「バカバカ!引っ張るな‼︎」


強引にズボンを引っ張られ、パンツ姿になってしまった。


「パンツも脱いだほうがいいわ!」

「嫌ですよ!」

「洗濯しなきゃ!」

「やめろ!」

「暴れちゃダメよ!」

「んじゃ手離せ!」

「なにも嫌がることじゃないわ!これは愛!とても純粋なものなの!」

「真逆だわ!てか、わざと溢しただろ!」

「えへ♡」

「えへじゃねーよ!」


結局桜橋先輩が疲れて手を離し、俺はクッションでパンツを隠して桜橋先輩を正座させた。


「先走りすぎです」

「ごめんなさい」

「このために俺を呼んだんですか?」


無言で頷かれ、心底呆れた。


「サンドイッチ作ってくれたのは良かったのに、なんでまた段階無視するんですか」

「早く知りたかったの」

「ハッキリ言いますけど、桜橋先輩のやり方じゃ、なにやっても愛なんて感じれませんよ」

「やっぱり体と体を重ねなきゃいけないのね。私もそこまでするのは、まだ勇気がなくて‥‥‥」

「いや、はい、そうですか」

「それに痛いって書いてあったし、痛いのは苦手なの。その痛みが愛なら乗り越えるけれど、実際どうなのかしら」


童貞の俺に聞かれましても‥‥‥


「好き同士でなら分かりませんけど、友達同士でしちゃったら、ただのセフレです」

「セフレ‥‥‥セカンドフレンドね!友達より濃厚な関係ってことよね!」

「間違ってるけど間違ってない!」

「私達、セフレになりましょ!」

「なっ⁉︎」

「なぜ赤くなっているの?」

「そりゃなりますよ!」


その時、俺の携帯が鳴り、確認すると美山からの電話だった。


「ちょっと静かにしててください」

「分かったわ」


本当に大丈夫かな‥‥‥

多少不安が残るながらも電話に出た。


「もしもし?」

「文月くん!今なにしてる?」

「えっとー、フィギュア眺めてた」

「リサイクルショップ?」

「いや、家だ」

「あれー?おかしいな。私今、文月くんの家にいるんだよ?」


な‥‥‥なんだそれ〜‼︎怖い怖い怖い怖い‼︎


「い、家の中?」

「うん。文月くんのお母さんがね、帰ってくるまで文月くんの部屋に居ていいよって。優しいお母さんだね」

「へっ、へー‥‥‥」

「どうして嘘をつくの?」

「う、嘘じゃないぞ⁉︎イェーイショップっていうリサイクルの略称だから」

「イェーイショップ?そんなのないよ」

「あるよ!」


その瞬間、桜橋先輩はいじっていた携帯をテーブルに置き、笑顔で俺の顔を見た。


「セフレって、友達以上恋人未満のことなのね!友達の次のステップってことは、やっぱり私達はセフレになるべきなのよ!」

「‥‥‥」


一瞬で血の気が引いて体が震えた。


「文月くん」 

「な、なんだ?」

「また会長にいじわるされてるんだね!大丈夫。今すぐ行くから住所教えて!」

「はい⁉︎」

「嘘をつけって脅されてたんでしょ?文月くんが私に嘘つくわけないもん!」

「そ、そうだよ!俺は嘘つかない!」

「だよね!住所教えて!」

「ねぇ、双葉くん!私とセフレになって!」

「文月くん、早く教えて」

「桜橋先輩、美山が来たがってます」

「嫌よ。首しめられたくないもの」

「だってよ、聞こえたか?」

「首しめられたくない?なんでそんなレベルで済むと思ってるのかな」


こっわ‼︎‼︎‼︎でも美山は俺には何もしないみたいだ。あくまで悪いのは桜橋先輩って考えか。


「駅集合で」

「分かった!今すぐ行くね!」


電話を切ると、桜橋先輩は困り顔で俺の両肩を掴んだ。


「ちょっと!私が死んでもいいの⁉︎」

「死にませんよ!いくらなんでもそこまでしてこないはずです!」

「美山さんは怖いのよ⁉︎」

「桜橋先輩でも美山が怖いんですか」

「当たり前じゃない!とても優しく、いい子だと思っていたから、ギャップで恐怖が倍よ!」

「大丈夫ですよ。美山は多分、俺が言うことが絶対みたいなタイプなので、いざとなれば守ります」

「守ってくれるの?」

「はい」

「でも、パンツで駅に行くの?」

「あっ」

「私のパンツ貸す?」

「なんでパンツなんですか!ズボン貸してくださいよ!」

「私服はほとんどスカートしかないわよ?」

「んじゃ一人で行ってください」

「守ってくれるって言ったじゃない!」

「学校のジャージとかないんですか?」

「ジャージでいいの?」

「桜橋先輩が嫌じゃないなら」

「今持ってくるわ!」


桜橋先輩は一回から学校のジャージを持ってきて、ガン見される中、恥ずかしさを捨てて桜橋先輩のズボンを履いた。


「ちょっとキツいですね」

「私のを履いた気分は?」

「さっさと行きますよ」


こんな美人な先輩のズボン!なんか目覚めそう‥‥‥美人だし、イメージ通りで、イメージと違う部分が優しいとかだったなら、絶対惚れてた自信あるのに、勿体無いな〜。本当、美人だからギリギリ許せてるだけだわ。汗かいても良い匂いしかしないし、おっぱい大きいし。


そして、俺達は二人で自転車を漕ぎ、待ち合わせの駅に向かった。

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