そういう奴ら
「今日はまだ忙しいですか?」
「今日は終わりよ?」
「卒業まで、少しでも一緒に居たいので泊まっていっていいですか?」
「もちろん!」
「入って入って!」
「ありがとうございます!」
いきなりでも泊まることを許可してくれ、次の日、同じベッドで目を覚ました。
桜橋先輩はまだ幸せそうに寝ていて、風邪を引かないように肩まで布団を掛けてあげてから俺は一度自分の家に戻り、学校の準備をして一人で登校した。
「双葉さん双葉さん‥‥‥昨日はその‥‥‥」
申し訳なさそうな顔をした桃が話しかけてきたが、もう俺の中では決意が固まり、解決している。
ここは優しく
「気にするな!昨日桜橋先輩と話し合ったからさ!」
「別れたりしてませんよね‥‥‥」
「逆だよ逆。ますます関係がレベルアップした!」
「レベルアップ?」
「約四年後、それが分かるかもな!」
「楽しみにしてます」
「おう!美山にも、話し合って元気になってたって伝えておいてくれ」
「はい、伝えてきます」
表情が明るくなった桃が教室を出て行くのを見送ると、行き違いのように紬先輩がやってきた。
「副会長、ちょっと」
「ふぇ?」
「ふぇ?じゃないですよ。早く来てください」
呼ばれて教室の外に出ると、紬先輩は周りに聞かれないようにか、少し背中を丸めて口の横に手を添えた。
「一花ちゃんが胸が痛くてって、女子トイレでマッサージしてるんですけど」
「なんかの病気ですか⁉︎」
「副会長、強く揉みすぎです」
「‥‥‥」
「ほどほどにですよ?分かりましたか?」 「はい‥‥‥ごめんなさい」
「それともう一つです」
「はい」
「一花ちゃん、最近は副会長の話をする時は悲しい顔をしていたんですけど、今日はとても幸せそうでしたよ」
「え」
「それだけです!んじゃまた!」
なんかもう感情がぐちゃぐちゃだわ‼︎‼︎‼︎
それから今日は一日中テストで、やっと放課後になると、美山から『今日から卒業式まで、副会長の仕事は休み!一花先輩との時間を大切にね!愛してる♡』とメッセージが届き、最後の一文を理由に、一応メッセージを削除して桜橋先輩の家へ急いだ。
「双葉くん⁉︎どうしたの⁉︎」
チャイムを押すと、驚きながらも嬉しそうに玄関を開けてくれた。
「邪魔しないので、一緒に居てもいいですか?」
「いいわよ!それか、一度帰って明日の準備して、今日も泊まって行ったらどう?」
「そうします!すぐ戻りますね!」
「待ってるわね!」
「はい!」
それから毎日桜橋先輩の家に泊まるようになり、残された時間を大切に、一緒にご飯を作ったり、家で映画鑑賞をしたりして、少しでも二人の思い出を増やしていった。
そしてホワイトデーの朝
「桜橋先輩」
「おはよう」
「本当、下着姿のまま寝るの勘弁してくださいよ」
「誰が下着姿にしたのかしら?」
「‥‥‥わ、渡したいものあるので一階で待ってますね」
「すぐに行くわ!」
美山達には桜橋先輩に嫌な思いさせたくないということでメッセージを送って、バレンタインのお返しは無くて大丈夫と理解してくれた。
しばらくして、パジャマを着た桜橋先輩がリビングにやってきて、俺はこっそり買っておいたペアリングを渡した。
「今日はホワイトデーなので!プレゼントです!」
「箱開けてもいい?」
「はい!」
小さな箱を開けてペアリングを見た桜橋先輩は、箱を胸に当てながらジャンプしたりクルクル回りながら喜びを表現し始めた。
「やったー!」
「ドンドンうるさいですよ!」
「嬉しすぎるんだもの!」
「可愛いですね」
「そ、それはあまり」
「え」
「双葉くん、可愛いってあまり言ってくれないから、言われると恥ずかしいわ‥‥‥」
「可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い」
「もう!」
「イギリスで可愛いって言われても、今みたいに赤くならないでくださいね〜」
「ならないわよ!誰に言われても嬉しいわけじゃないの」
「ならいいですけど。でも、ペアリング付けてれば、お互いに想い人がいる証拠にもなるので、お互い安心じゃないですか?」
「うん!私がイギリスにいる間に浮気なんてしたら分かってるわよね?」
「殺されるんですね、分かります」
「殺したりしないわよ?」
「あ、しないんだ」
「タトゥーで身体中に私の名前を入れてもらうわ」
「こわっ!そもそもしないから大丈夫だけど!逆に桜橋先輩がしたらどうするんですか!」
「すぐ死ぬ」
「えぇ〜‥‥‥」
「お互いに不安はあるけれど、私は双葉くんを信じてるわ」
「俺も信じます」
その後、二人でシンプルなペアリングを付けてツーショットを撮り、ゆっくり休憩を過ごした。
そして、ついに卒業式の日がきてしまった。
「んじゃ、俺は先に行きますね」
「今日の夜は、一緒に居れる最後の夜だから」
「四年経てばまた一緒に居れますよ」
「それもそうよね」
寂しさで泣き出しそうな桜橋先輩を家に残し、先に卒業式の最終準備に向かった。
あれ以上一緒にいたら、俺の方が先に泣いてしまう。
学園に着いて体育館に行くと、生徒会のみんなが準備をしていて、俺に気づいた桃が近づいてくる。
「双葉さん双葉さん」
「おはよう」
「おはようございます。サプライズ、どうします?」
「あぁー、結局なにすることになったんだ?」
「やっぱり、サプライズプレゼントは双葉さんだと思うんです」
「俺?」
「最後に、先輩の不安を無くしてあげるプレゼント。双葉さんが全校生徒の前でキスをすれば、浮気の心配もなくなりますし」
「は⁉︎無理だわ‼︎」
「しなかったら美山さんと私で、略奪愛を測ります。私と美山さんのためにも、最後の最後で本気だってところを見せつくてください」
「略奪愛って‥‥‥」
「私と美山さんで、双葉さんにキスしちゃいますよ」
「バ、バカか!」
「鈴穂さん!」
「んー?」
「一緒に双葉さんにキスしましょう!」
「は〜⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎」
「わ、分かったから!やるから!」
「ならいいです。鈴穂さん!」
「な、なに⁉︎」
「双葉さんは鈴穂さんなんかとキスしたくないそうです!」
「殺す」
「桃‼︎なに言ってんだよ!す、鈴穂!来るな〜!」
「待て〜‼︎」
「助けてくれ美山!」
「どーしよったかな〜」
「なーんで⁉︎いつもなら助けてくれるよな!」
「あはははは!」
「笑ってないで助けろ!」
体育館を逃げ回りながらも俺は気づいている。こいつらは、少しでも明るい雰囲気にしようとしてくれてるんだ。そういう奴らだもんな。
桃と美山は笑顔だし。ただ、鈴穂はガチで追いかけてきてる可能性を捨てきれないのが怖いんだ‼︎
「死ね〜‼︎‼︎‼︎」
「ぬぁっ‼︎‼︎‼︎」
「ボッコボコにしてやる〜‼︎」
「椅子投げんな‼︎」
やっぱりこいつだけガチだわ。
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