変態な先輩が俺と結婚した日
「双葉くんったら酷いのよ?やっとお父さんに携帯返して貰えて、双葉くんに連絡しようと思ったら、四年間一回も連絡してくれてなかったの!」
「あはは!」
「没収されてたなんて知らなかったんですよ!」
「双葉くんは私に興味すらないのよ」
「ありますから!」
「どうかしらねー」
「酷いですよ〜」
俺達はお互いの両親に結婚の許可を貰い、その報告のために美山と桃、紬先輩と鈴穂の元生徒会のみんなで俺の部屋に集まった。
「それで、なんの報告ですか?」
「岡村さん!よく聞いてくれました!」
「俺達、結婚することになったんだ」
さらっと言ってしまったのがダメだったのか、美山と桃が白目を向いて倒れてしまった。
「双葉先輩!今のは刺激強いよ!」
「俺のせい⁉︎」
「大変だよ!桃ちゃんが痙攣してる!」
「双葉くん♡私達の愛が強すぎたのね♡」
「アホなこと言わないでください!倒れてるんですよ⁉︎」
「もっと愛を高めましょ!」
「バカっ!」
桜橋先輩はみんなの前で堂々とキスをしてきて、次は目の前で鈴穂が倒れてしまった。
「鈴穂ちゃんも倒れたよ⁉︎バカップル見せつけるのも程々にして!」
「もう結婚するからバカ夫婦ね!ん?伊角さん、私にバカって言ったのかしら」
「いきなり我に返らないでよ!三人ともしっかりして!」
紬先輩が気絶中の三人の体をゆすり、三人は寝起きのような顔をして意識を取り戻した。
「なんか、悪い夢を見てた気がする」
「私もです」
「同じく」
「夢じゃないわよ?」
「桜橋先輩?黙りましょうね?」
「はーい」
それから、桜橋先輩の卒業アルバムと俺達の卒業アルバム。そして鈴穂の卒業アルバムを見ながら懐かしい思い出に花を咲かせていると、俺の卒業式の時の写真を見た桜橋先輩が、低い声で聞いてきた。
「そういえば双葉くん」
「はい?」
「第二ボタンって誰かにあげた?」
「あげてませんよ?」
「私もらった」
「は?浮気?は?」
「鈴穂⁉︎桜橋先輩も怖いです!」
「松下さんにあげたの?」
「あげてませんよ!なんで嘘つくんだよ!」
「なんかちょっとイラッとしたから」
「それじゃ、誰にもあげてないのね!ちょうだい!」
「そ、卒業の時に貰わないと意味ないんじゃ‥‥‥」
「いいえ!関係ないわ!」
「‥‥‥」
「どうしたの?顔色悪いわよ?」
卒業式から数日後、美山がどうしても制服が欲しいって言うからあげてしまっている!ボタンをあげたって感覚は無かったんだ!やだ!殺される!
「私、知ってます」
桃〜⁉︎言うな‼︎言うなよ⁉︎
目で桃に訴えるが、桃はプクッと頬を膨らませてしまった。
「美山さんが制服ごと貰いました」
アウトだ〜‼︎‼︎‼︎
「双葉くん♡」
「はい‥‥‥」
桜橋先輩はニコニコしながら右手をパーにしてゆっくり振りかぶった。
「美山!ヘルプ!」
「返す!返しますから!」
「なら許すわ」
「私は許さない」
「鈴穂?」
「私に第二ボタンあげるの断って、美山先輩にはあげるんだ。信じらんない」
「いや、なんて言うか、な?」
「ふん!」
焦る美山と膨れた桃、シンプルに怒る鈴穂とニコニコしながら怒ってる桜橋先輩に囲まれ、俺の狭い部屋でとんでもない修羅場が生まれてしまっている。
紬先輩に頼るしかない‼︎
「あっ‥‥‥」
紬先輩は巻き込まれないように、イヤホンをつけて音楽を聴いていた。
「まぁでも!私が居ない間も楽しくやれていたと知れて嬉しいわ!」
「はい、みんなが居たから四年も耐えられたのは確かです!」
なんとか四人に笑顔が戻ったが、紬先輩だけは全く状況が分からない状態だ。
「婚姻届はいつ出すんですか?」
「早ければ明日、一緒に出しに行く予定よ!」
「やっぱり悔しいですけど、ちゃんと幸せになってくださいね」
「ありがとうな」
「そうだよ!文月くんは私の元カレなんだから!幸せにならなきゃ!」
「美山は一言多い」
「まぁ?二人はお似合いなんじゃない?四年離れてもこんなにラブラブなんだから、結婚しても大丈夫でしょ」
「鈴穂もありがとう」
卒業後も、三人が俺を好きでいてくれたことは知っている。
俺の新しい生活が始まるということは、三人の恋が終わることを表している‥‥‥
「美山、桃、鈴穂」
「ん?」
「今まで、俺を好きでいてくれてありがとう!」
三人は一瞬泣きそうになりながらも、一度俯いて笑顔を見せた。
「どういたしまして!」
「好きにさせてくれてありがとうございました!」
「わ、私は別に好きじゃなかったけど、なんか、まぁ、うん。ありがとう!」
「おう!」
その日はみんな含め、俺と桜橋先輩の両親も混ざって全員で焼肉を食べて、俺達の結婚をお祝いしてくれた。
そして翌日、俺と桜橋先輩は一緒に婚姻届を出しに行き、念願だった結婚生活が始まった。
「桜橋先輩!」
「もう桜橋じゃないわ」
「そ、それじゃ、い、一花」
「どうしたの?」
「これからも、いろんな愛を教えてくださいね!」
「私の台詞よ!双葉くんにはいろんなことを教わったわ。これからもよろしくね!」
「はい!」
一番怖かった先輩が、今では誰よりも可愛く思えて、俺を愛してくれている。
いろんな人生の先輩が言う『人生分からない』って言葉は、こういうことなんだなと実感した。
「きゃ!」
「どうしました⁉︎」
「やっちゃったわ!」
「うわ!」
一花は新居に来て早々に、重い段ボールを壁にぶつけて穴をあけてしまった。
「やっちゃったわじゃないですよ‼︎」
「壁はやっちゃったし、次は私達がヤッちゃう?♡」
「黙れアホ」
「酷いー!」
こんなハプニングさえ、一花がいると幸せの一欠片になってしまう。
人を信じて、愛してよかった。
変態な先輩が俺と結婚しようとエッチな誘惑をしてきます‼︎ 浜辺夜空 @0kumo0
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