揉み揉み攻撃‼︎
入学式の翌日、珍しく登校中に美山と桜橋先輩と鉢合わせした。
「文月くんおはよう!」
「おはよう」
「今日は早いのね」
「はい。めっちゃ気合い入ってるので」
「文月くんなら大丈夫だよ」
「ありがとうな。新しい教室はどんな感じだ?」
「やっぱり生徒会入ってるってだけで、すぐに友達できるよ!」
「おー、いいじゃん」
三人で話しながら、リラックス気分で登校し、一年生が登校してきた頃、俺は一人で一年生の教室に向かった。
「Bです」
「ん、ありがとう」
桃がすれ違いざまにクラスを教えてくれたのはいいけど、急に後ろから来るな‼︎
存在が不気味で怖いんだから、来るなら前から来いよ!と思っているうちに1年B組の前に着いてしまった。
「副会長!おはようございます!」
「あ、おはよう。あの人呼んでくれるかな」
「はい!」
一年生に挨拶されてちょうどいいと思い、因縁の相手を呼んでもらうことにした。
「
本名、鈴穂っていうのか。
「よっ」
「なんですか?」
「久しぶりだし、過去のことは水に流して仲良くしようぜ!」
「よくそんなことが言えるね。傷つけられた方は一生忘れないんだよ」
「そうだったな。俺はお前の被害者思考に苦しめられたんだったわ」
「‥‥‥」
「は⁉︎」
鈴穂は急に涙を流し、異変に気付いた生徒が集まってしまった。
「鈴穂ちゃん大丈夫?」
「酷いよ‥‥‥私はフバキくんになにもしてないのに」
こいつ‥‥‥
「副会長、なにかしたんですか?」
「い、いや!泣くとかずるいだろ‥‥‥」
「さすがに副会長でも、女の子を泣かすのはちょっと‥‥‥」
このままだと、一年生からの俺の評判が駄々下がりだ。勢いで乗り切るしかない‼︎
「鈴穂!久しぶりの再会が泣くほど嬉しいか!」
リアルでは昨日初めて会ったけど。
「よしよし!副会長の俺がジュース奢ってやろう!」
鈴穂の腕を引っ張って無理矢理その場から立ち去り、自販機ではなく、屋上へやって来た。
「触らないで」
「悪い悪い。てか、二人きりになったら急に泣き止むのな」
「怒りの方が勝つから」
「ずばり聞く!なんで俺を落とし入れた!」
怒ってる感じではなく、ノリノリで明るく聞いてみた。
「私、フバキくんのこと応援してたのに、フバキくんは私に冷たかった。だからムカついた」
「うっわ‼︎ヤバイなお前!そもそも冷たくした覚えないし!」
「したよ」
「お前あれだろ。自分の思い通りにならないと絶対に嫌なタイプだろ!」
「どうしてそういうこと言うの?このクズ男」
「いや、どうしてそういうこと言うの⁉︎」
「なにそのテンション。きも」
「いいからさー。仲直りしないか?」
「無理、うざい、死ね」
「やっば」
「てかさ、実際会ったらあまりかっこよくないね」
「さっきから酷くない⁉︎これでもモテモテだけど⁉︎」
悔しいことに、鈴穂は普通に可愛い。若干地雷臭するけど。
「あの会長?付き合ってるの?」
「いや別に」
「んじゃ、もっちんと付き合ってる?」
「うわ、懐かしい名前だな。そんな視聴者も居たな」
「あの座敷わらしみたいな先輩、もっちんなんだけど」
「‥‥‥桃ってもっちんなの⁉︎」
「知らなかったの?」
「全く知らなかった」
もっちんは俺が配信を始めると、いつも一番乗りで見に来る熱狂的な視聴者だった。それがまさか桃だったとは‥‥‥
「とにかくさ、フバキくんが」
「ちょっと待て。俺のことは双葉って呼べ」
「双葉」
「先輩つけろ」
「双葉先輩が謝ってくれればそれでいいよ。前にも言ったのに、謝らないで逃げたよね」
「謝る理由がなかったし、むしろ謝ってもらいたいぐらいだったんだけど。そもそもお前、俺をブロックして悪口言ってたじゃん。全部情報入ってきてたぞ」
「もっちんからでしょ?あいつマジうざい」
「桃は俺の友達だ。酷いこと言うな」
「友達がいていいね。私は全部失ったけど」
「クラスメイトと仲良さげだっただろ」
「仲良くしないと居場所ないし」
自分の思い通りにいかないとダメなタイプでも、自分の生活しやすい環境を作ろうとはするんだな。
嫌だけど、謝って終わりにするか。
「とにかく、冷たくして悪かった。ごめん」
「認めたね。クズ」
「お前さー!謝ったらいいって言ったよな⁉︎」
「謝って済むと思ってるとか、それでも年上?」
「もうマジで仲良くしてくれよ〜!」
「今更仲良くとか無理」
「なら」
話を聞いていたのか、桃が扉を開けて屋上にやってきた。
「もう関わらないでください。貴方の方から双葉さんと関わらないとか言ったのに、ずっと悪口言い続けて、双葉さんがそれに反応したら泣いて励ましてもらって、当時の貴方はそんな感じでしたよね」
「部外者は黙っててくれます?」
「部外者じゃないこと、貴方は分かってるじゃないですか」
桃の口調が少し力強い。怒ってるのか。
「私は貴方で人間の汚さに気付いて人が嫌いになりました」
「だから?」
「だから幽霊とお友達になろうと思いました」
「な、なに言ってるの?幽霊も元人間だし」
「私は幽霊が見えないので、声も聞こえないですし、生身の人間よりいいです」
「あのさ、なにが言いたいの?」
「人が嫌いだったり、誰も信じれなかったり、そうやって人を避けていても、心のどこかには寂しさが残ります。貴方もきっとそう。周りから人がいなくなって、本当は寂しい。双葉さんが仲良くしようとしてくれているうちに貴方も謝るべきです」
「勝手なこと言って、私のなにが分かるの?」
「Cカップですよね」
「なんで分かるんだよ!じゃなくて、いきなりなんなの⁉︎」
へー、Cカップなのか。ふむふむ、ちょうどいい。
「なにエロい目で見てんの?」
「見てないよ?本当だよ?」
「双葉さんは日頃からエッチなことされてるので、制服の上からの胸なんかエッチな目で見ないです。だから本当だと思います」
「桃、黙ろうな」
「やっぱりクズ男じゃん!」
ただ話しててもダメだ!双葉文月!戦闘モードにスイッチ切り替え!
「桃‼︎そこのCカップを揉んでやれ!本当はBかもしれないぞ!」
「はい⁉︎」
「分かりました」
「ちょっ、ちょっとやめてー!」
桃は鈴穂の背後からしがみつくように胸を鷲掴みにして、豪快に揉み始めた。
「ふはははは!ざまぁねーな!お前がなにをしようが、俺をどう思おうが、この学園の生徒会の力は最高レベル!お前は俺の命令に従って仲良くするしかないんだよ!」
「いやっ!んっ、ちょっと!あっ」
待て待て。凄いエッチですね。
「謝って、仲良くするって言ってください」
「ご、ごめんなさい〜!」
「ここがいいんですね。ほれほれ」
桃がエロオヤジみたいになってる‥‥‥でも鈴穂が謝ったぞ⁉︎
「いやっ♡!」
「声が色っぽくなってますよ」
「そ、そんなに触ったらダメ!」
「いいぞ桃!もっとやれ!」
「仲良くしてくださいって言ってください」
「そ、それは!んっ!」
はっ‥‥‥扉の隙間から目を見開き、凄まじい目力で俺を見ている美山と目が合った‥‥‥
「も、桃!もうやめろ!」
「分かりました」
「こ、この変態!このこと学園中にバラすから!そしたら二人とも居場所を失う!覚悟しろ!」
「文月くーん?」
「は、はい!」
「え、誰?」
「大変なことになりましたね。怪我しないように気をつけてください」
「怪我⁉︎」
美山はジリジリと俺に近づき、ニコッと笑みを浮かべた。
「随分と楽しそうだったね!」
「いや‥‥‥その‥‥‥」
「鈴穂ちゃんだっけ?」
「は、はい」
「どうするー?文月くんの鼻の下を伸ばさせた罪、文月くんを苦しめ落とし入れた罪、どっちを先に償う?」
「え‥‥‥」
「謝ってください。今の美山さんはバーサーカーモードに入りかけてます」
「ご、ごめんなさい!」
「なにがごめんなさいなのかなー?」
鈴穂は怯えているのか、顔がこわばっている。
「ふ、双葉先輩を傷つけてごめんなさい!」
「ちゃんと謝れて偉い偉い!聞きたい言葉が聞けたから、消えよっか!」
「桃‼︎美山を抑えろ‼︎」
「はい!」
「ちょっと桃ちゃん!離してよ!」
「鈴穂!逃げるぞ!」
「なんなの⁉︎」
鈴穂を連れて階段を駆け下り、生徒会室に逃げ込んだ。
生徒会室では、桜橋先輩がアロワナに餌をあげている最中だった。
「あら双葉くん。何故手を繋いでいるの?ねぇ、なぜ?」
桜橋先輩は瞬きをせずにジワジワと近づいてきて、何故だか美山と同じ狂気さを感じた。
「美山から逃げてきたんですよ!」
「二人が仲良くできたらなとは思っていたけれど、手を繋ぐほど仲良くなったの?それは予定外だわ。今の双葉くんは私か美山さん以外とそういうことをしてはいけないの」
「どうなってるの⁉︎生徒会の人って怖い人しかいないの⁉︎」
「怖い?私が?私は貴方の方がよっぽど怖いと思うわよ?なんでかって?」
「いや、聞いてないけど」
「大っ嫌いな相手と当たり前のように手を繋いでいた、その神経の図太さが怖いわ。そういえば、私を地獄に落とすとか言っていたわよね。貴方にできる?私が本当の地獄を見せてあげてもいいわよ?」
「に、逃げるぞ!」
「もー!本当なんなのー!」
結局、俺と鈴穂は誰もいない理科室に逃げ込み、息を切らして椅子に座り込んだ。
「はぁー、マジで疲れた」
「本当ふざけないでよ!」
「俺に言われても困る」
「でも、配信やめても人気者なんだね」
「二人からだけな」
「そうなんだ。で、どうして私を助けてくれたの?」
「鈴穂が怪我しそうな気がしたから。勢いで助けた」
「へー」
「なんだよ」
「本当は私なんか怪我しろとか思ってるんでしょ?」
「なんだよそれ、めんどくさいなー」
「は?まぁでも、ありがとう。私を見捨てないでくれて」
「はいよ」
自分が選ばれることで承認欲求が満たされたってやつか。理由はなんでもいいや、俺頑張ったな‥‥‥結局、桃に救われた感じあるけど、なんとかいい方向に進みそうだ。
「あの会長、なにしたら嫌がる?」
「なんだろうな」
「文月くん?」
「双葉くん?」
「あっ」
美山と桜橋先輩が理科室の扉から顔を半分だけ出して目を見開いている。
命の危険を感じた俺は一瞬で立ち上がった。
「ちょっとトイレ」
「最後の最後で見捨てるわけ⁉︎」
「1日に助けられる数が決まってんだよ!」
「ちょっと!」
二人がいる逆の扉から理科室を飛び出し、廊下の曲がり角で聞き耳を立てていると
「嫌!触らないで!」
と言う鈴穂の声に続き、桜橋先輩の声が聞こえてきた。
「これがあるからいけないのね」
「そうです!」
「ま、待って!引っ張らないで〜!」
「早く取りなさい」
「胸は取れないー!」
え‥‥‥なにされてんの‥‥‥
二人とも俺を助けるとか、それとは別のことで首を突っ込んできたな。
でも鈴穂は、胸で良かったと思うべきだ。紬先輩はもっと酷いことされてるからな‥‥‥
「取れないから乳毛描いてあげるわ!」
「いや〜!!!!」
あの二人、毛好きすぎだろ‼︎
二人を振り解いたのか、鈴穂は必死な表情で理科室を飛び出して逃げていった。
次はもっと仲を深めつつ、桜橋先輩がなにかされないように見ておかないとな。
鈴穂は周りを巻き込むのが得意だから、桜橋先輩と美山が怖い相手だと分かっても関係ない。
それに、俺のこと嫌いじゃなくなったとかではないだろうし、俺もやばいかもな‥‥‥
「鈴穂さんのおっぱい、柔らかかったです」
「も、桃か。あまり後ろからくるな」
「ごめんなさい。いつか会長のも触りたいので、お願いしますね」
「今の問題が解決したらな」
「感謝します」
桃って女が好きだったりするのだろうか。
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