第2話
この斡旋所というものは、正確に言えば冒険者業組合の事務所だ。
冒険者の有資格者向けに業務を公的に斡旋できる斡旋所の他に、登録や廃止、報告などの業務を行う部署、第一種業務のために各種情報の公開、技能向上のための講習会や技能認定会などを行う。
この首都にある斡旋所は冒険者業組合(通称組合、以後この表記を用いる)の本部としての機能もあるので結構大きく、冒険者向けの談話スペースや会議室、ちょっとした飲食ができるスペースなども備えられている。
その談話室の端の端でため息をついていた剣士と魔法使いがなんとなく話し始めた結果が冒頭につながるのである。
「まぁ俺も似たような口なんだけどさ」
20になったばかりの魔法使いとくらべて、15か20ほど年が上の剣士はそう口を開いた。
「傭兵団の規模縮小で首になったんだよ」
この国では傭兵や猟師でも冒険者の資格を取ることが多い。第三者と交渉の手順や業務遂行の流れ、各種規格や規制などを覚える必要がある第二種と比べて第一種はわりと取りやすく、所持携帯できる武装など各種法的制限の緩和の恩恵を受けられるので仕事の幅が広がるためだ。
なので組合に属していない冒険者も珍しくない。
「最近はどこも平和ですからね」
戦争や争いがなければ傭兵は暇だ。そういう場合その他の業務を請け負ったりするのだが、その前に人員削減で負担を減らすのが世の常。
その結果として目の前の剣士は切られたのだ。
「まぁ世の中平和ってのはありがたいことではあるがね。この年になるまで傭兵でしか食ってない人間が他につける仕事なんてないんだよ。一応でも資格があるから冒険者が一番かねぇ。と思って斡旋所に来てみたんだが、資格はあるが冒険者なんてやったことがねぇからさ。独り身でそういうやつを雇ってくれるやつがねぇ」
「なんか妙に渋いんですよね。前までこんなことなかったのになぁ」
そして二人でため息。
渋い、というのは間違いでここ最近はどこの冒険者もチームやパーティーを組むのが流行りなのでチーム前提の仕事が多いというだけだ。
二人のような人間にとっては渋い、というのは間違いではないんだが。
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