第72話

「あんたが村長さんかい」

 村の酒場で昼の営業時間が終わっても居座ってる一段、全部で15人か、とは女主人の旦那の数え。

「そうだが、なにか用かな。呼び出すからには」

 おそらく集団の中心、小汚い鎧と剣を持った男がそんなことを言った。この小汚さは手入れをしてないからか、それとも実用としていまだに使っているからか。

「そこまで警戒しなくてもいい。こんなド田舎に居座ろうって気はねぇからな」

 そう言って下品に笑う。そしてヤジ。女主人が山賊か野盗の類といったのもわかる。というよりも実際その手の類だろう。冒険者かも怪しいとは猟師の考え。

「この辺にダンジョンがあるって話を聞いてな。そこに行きてぇんだが、道案内してくれねぇか?」

「ダンジョン」

「それなら俺のほうが詳しい」

 そう言って元猟師は口をはさむ。

「詳しいが、あんたらみたいな集団で行って利益があがるような場所じゃないぞ」

「こっちには情報があるんだ。黙って案内しろ」

 そう言って柄を鳴らす男。

 周りの集団も柄に手をかける。次は抜き、その次は乱闘。

「わかった」

乱闘は避けたい。暴徒化したら村に被害がでる。われわれじゃ勝てないだろう。

「ただ私たちには暇がないしダンジョンまでの道筋もよく知らないんだ。だから近くまでは案内しよう。そこから先は自分たちで行ってくれないか。ついていっても邪魔になるだけだろうし」

「良いだろう」

 そして立ち上がる男たち。代金など払う気は初めからないが、女主人もめんどくさい連中に請求してトラブルは起こしたくない。

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