第38話
冒険者が行くようなところでもない、と言うのは元猟師なりの比喩だが、本業のVは言いたいことはなんなく分かった。
素人が単独で乗り込むにはまぁ危険だが逃げてくることはできる。だからあえて専門家が乗り込むほどじゃない規模。
「モンスターの巣穴にほかのモンスターが住み着いた程度って感じですか。それでもダンジョンですから、そこから来てる可能性はあります」
「そこからねぇ」
元猟師は部屋の窓に向かい
「ここからじゃ見えねぇなぁ。この沼とは反対側の、ほら、あんたに教えた山菜取りの名人のばぁさんが畑やってるとこ、わかるかい」
「昨日だったかにVが見に行ったよ」
「そこの畑の周りに森が有るだろ。その森の奥に続く道があるんだ。木こりや山菜とりもそこまでいかねぇ、大昔の道なのか獣道なのかもよくわからねぇ荒れた道で、冠水して沼や川になっちまってる所もあるくらいでな。まぁその道を一晩くらい泊まって進むと、その先にちょっとした山があるんだ」
若いころを思い出しながら元猟師は続ける。
「遠目にみると周りの木で隠れちまって目立たねぇ程度の小さな山なんだが、その上の方に煉瓦でできた廃墟、俺が行った頃の話だからもうなくなってるかもしれねぇな、まぁ俺がいたころは小さい廃墟があった。そこにオークとか鳥型のモンスターなんかが住みついてる感じさ」
「そんな遠いんですか?」
Vは考える。
「そうさ。だから鳥型モンスターの連中がスライム取りにでてきて村のはずれまで迷い込むくらいのことはあると思うし、実際昔あったけどよ、村に出てくるモンスターが増えてる原因がそこにあるとはちょっと思えねぇなぁ。モンスター共にしても、わざわざ村の方までくる必要がねぇだろ。俺はモンスターについては素人だから違ってるかもしれないがよ」
「そうですねぇ」
元猟師は経験から何となく言ってるが、実はその考え方は概ねあっている。
普通のダンジョンであればモンスターが一種類、二種類程度増えてそれを受け入れる余裕がある。そういう土地だから数種類のモンスターが一か所に集まるのだ。
だから鳥型のモンスターが迷ってほかの縄張りを荒らしたりするようなことはあるが、危険なモンスターが何種類もダンジョンから外にでてくるようなことはない。
仮に出てきたとしても、それが直接人里までモンスターが出てくる原因になるとは限らない
移動した先にモンスターや獣がいなければ移動しておしまいだし、仮にそこに群れがいて玉突きと同じ要領で喧嘩して、どちらかの群れが動く事になってもその次の場所に行くだけだ。
それを繰り返すとモンスターの数が減り群れ自体が弱くなるので消滅するか、どこかの群れとゆるく合体して一つになってしまう。
なので遠くの縄張りの移動が人里まで波及することはめったにない。
仮に原因があるとしたら森全体で不作なため食べ物がないか、ダンジョン全体のモンスターが何らかの理由で動いたくらいの話だろう。
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