第37話

 ダンジョンとは何か、という定義を求めると首都の学会にて一つの学術論争が起こるほど複雑で曖昧な話になる。

 が田舎の住人やドーリー、また多くの冒険者にとってダンジョンとは

「何種類かのモンスターがいる危険なところ」

というニュアンスでしかない。


 例えばゴブリンの巣穴はダンジョンではない。ゴブリンしかいないからだ。

 オークの住処もダンジョンではない。オークしかいないからだ。

 討伐されたゴブリンの巣穴にオークが住み着き、そこにゴブリンの残党が戻り、その上空に鳥型モンスターがいると「ダンジョン」と呼ばれる。

 なのでそこに宝物があるか、財産があるかなどは関係ない。ダンジョンじゃなくてもモンスターはいるし金目のものがある。

 だからダンジョンに財宝があるかを見極めるのも冒険者の技能の一つ。


「あぁ、元は大昔の戦争に使われた砦だって話だけど、金目の物なんかない廃墟だから追い払う必要がないし、ほんとに森の奥にある山の上だからね。誰も近寄らないしモンスターも餌や相手が多いから下まで降りてこない。そんな感じで100年くらい放置されてる」

 村長はそう説明した。

「まぁ、あそこならあんな奴がいてもおかしくないと思うけど、そんなすごいダンジョンだっけ?」

 この村の村長もよく知らないのでそこに居た二人に聞く。

 そうしたらその質問を元猟師が受けてこういった。

「若い頃に腕試しだと一回行ったことがあるが、そこまですごいダンジョンじゃないよ。いや、危険なところには違いなんだが、おっかないモンスターが数種類居座ってるって感じだった。そうだな、冒険者のあんたらならわかると思うが、無鉄砲な田舎の若造猟師が一人腕試し気分で行って、遠巻きにみておっかねえおっかねぇって言いながら帰ってこれる程度のダンジョンって程度さ。そんな冒険者がわざわざパーティー組んで討伐するようなところでもないところだぜ」

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