第68話
二人は原因を察したが、じゃぁどうする?と言われると、
「出て行ってもらうしかないかなぁ」
というドーリー言葉以外の答えがなかった。
とは言ってもだ。空き家に居座る浮浪者を追い出すのとはわけが違う。
相手はドラゴン。怒らせたら手負いでもかなわない。だからと言ってここに居てもらってもこまる。
ドラゴンがどこかに行けばオークや怪鳥といったおっかないモンスターがここに戻り、村は普通の「よくいるモンスターと獣」が出る程度に戻るだろう。とはVの意見。
「まぁ、話は通じますから、正直に話して出て行ってもらいましょう。嘘ついても仕方ないし、ここに住もうって気があるような雰囲気じゃありませんでしたし」
「帰りたい。でも、おかぁさん、いやだ、いう」
Vの言葉に子ドラゴンはそう答える。
「そりゃ帰りにくいだろう。本心や理由はどうであれ、家から追い出されたのに、頭下げて「許してください、もう一回入れて」なんて言いたくないもんさ、メンツが立たない」
「ですよね」
ドーリーの言葉に、パーティーという群れから追い出された魔法使いは実感がこもった賛同の意。
「でも、それじゃ私たちの仕事は終わりません。ドラゴンのプライドと私たち、あと雇用主である村の利益、どちらが大事かと言われれば後者です。場合によってはどこか別の場所を紹介するとかするしかないでしょうね」
そう言ってVはドラゴンの子供を見た。
「君は帰りたいかい?」
「うん、おじいちゃん、やさしい、友達、みんな、村にいる、ここまで来たの、楽しかった、けど、もう、帰りたい」
「そっか」
追い出されても思い浮かべるのは故郷のこと。きっとそこは友達も家族も居ていい場所なんだろう。
「どうにかして、帰ってもらう方向で決着をつけましょう。なんなら僕がついていきますから、ドラゴンの族長と話が通じるのかわかりませんが、がんばるので」
「そこまでしなくて済むことを祈ろう。さすがに割に合わないにもほどがある。まぁもう割に合わない仕事だけどさ。それとV、やっぱり君は転職したほうがいいよ。冒険者なんかよりもっといい仕事があるはずだ」
子供、ましてや相手がドラゴンというモンスターでも気に掛けるような人間がやる商売じゃない。ドーリーは冒険者としては素人だが、その程度のことは知っている。
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