第69話
「そうですか」
二人に
「村にモンスターが来てるのはおそらくあなたが原因です。ですからここから出て行ってもらえませんか」
と正直に言われた親ドラゴンはただそう答えた。
そして沈黙。
「私も、身の振り方を考えていたんです。男に遊ばれて、追放されて、首都の貴族を頼ろうとこちらに向かってきたんですが」
そしてまた沈黙。
「私一人ならどこにでも行けるでしょうし、どうにかすることもできるでしょうが、子供にその重荷を背負わせるわけにはいきません。親のわがままで人生を変えるべきじゃないでしょうし、今でも我が子に迷惑をかけている。ですから故郷に一度帰って、みな、父にお願いしてみようかと思います。せめてその子だけでも、受け入れてもらえるように」
自分でもどう言えば良いのかわからないのか、いろいろな言葉がドラゴンから出てくる。
男に騙されて、人間のである自分の目の前で話す言葉に迷うこれが「怪物の神」の姿か、とはドーリー。しかし親としては立派な物。とも思う。
我が子の為に自分を捨てられる親がどれだけいるか、とはVの考え。
目の前にいるのは神であり、スキャンダルで追放された愚か者であり、子を持つ親である。別に三つは矛盾しない。
「Vさん、ドーリーさん、お世話になりました。お礼もできませんが」
「帰る?ほんと」
親の前で神妙に聞いていた子ドラゴンがそう聞く。
「えぇ、苦労させてごめんなさい。里に帰りましょう。かえってどうなるかはわからないけれど、お父さんと話し合いをしてみるわ。長い、長い話し合いになるでしょうけど」
「やった。帰る!※※※」
子ドラゴンの歓喜の声。
Vもドーリーも親ドラゴンも喜びの感情。
「泣く子と皇帝にはかなわないもんだな」
ドーリーはそんなことを言って、三人は笑った。
ドラゴンの親子が里に帰る。という事であれば二人の問題はすべて解決である。
むしろ怪我無く事故なく無事に帰っていただきたい、そのために協力を惜しむつもりはありません。という具合。
「では一度村の方に下りてきてください。そこで治療させていただきましょう」
「迷惑になりませんか」
「大丈夫かと思いますよ。田舎ですから人は少ない。取って食おうという人もいないはずですし、いい人ばっかりだし」
「でも俺らが説明しなきゃさすがに村人や村長が驚くし困惑するだろう。先に俺たちが下りて行ってそこで説明しようか。でも一日くらいかかるからなぁ」
「そういう事でしたら、お乗りください。あなたになおしていただいたおかげか、もう痛くもないのですよ。さすがにプロの方は良い腕をしていますね」
そう言ってドラゴンは体を低くした。
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