第74話

 街中をあるく密猟者はその一声に色めきだった。

 狙いの物。数週間前に取り損ねた怪物。

 15人という頭数もドラゴンならおつりがくる。

 そして浮足立った。

 正面からやり合って勝てるか。

 その答えはみんな気づいていた。しかし誰も言えない。

 けれど引くことはもうできない。


 ドラゴンは雄叫びを上げるがままにその一行の上空へ。

 町の真ん中。酒場も近い。暴れれば大被害だろう。

「ドラゴンだ」

 村長の言葉。シンプル極まりない状況説明。

「逃げましょう」

 ほかの傭兵が判断に困ってる所を見て取り、元猟師はそう言って村長を引っ張る。

 村長も従って頭を下げながら近くの家に。

「まて」

 しかし元猟師は足をやってしまっている。密猟者の一人に首根っこをつかまれ

「ど」

次の瞬間その傭兵の腕に矢。

「うわ」

 さすがに猟師も驚く。

「逃げろ」

 しかし遠くから聞いたことがある声。田舎猟師とは言え、獣相手に場数は踏んできた。度胸はある。

 そして村長に支えられるように、近くの家の庭に転がり込んだ。

「村長さん。こっちです」

 そこの住人は家から飛び出し、二人を引っ張り込むように家に戻る。

 そして施錠。


「弓を構えろ」

 リーダー格の男の一声。そしてバラバラと発射。

 不意打ちならこれで何とかなる。しかし、正面からでは無理だ。大きく仰いだ翼ですべて落とされる。

 密猟者がなぜドラゴンを不意打ちをするか、といえば正面切って戦ったところで勝てるものではないからだ。

 そして一番の得策は子供を狙う事。

 大人は毒矢でもなければ倒せないが、そうなると肉が売れない。肉は意外と高いのだ。


「みなさん」

 男たちの周りに響くVの声。

「あなた方がどこのだれかは知りませんが、その目的は知っています」

 これもVの魔法である。声の音量を上げる。使い道がきわめて狭く、シンプルな目的ながら、軍隊から病院、学校まで幅広く使えるという事で色々な人が覚えている定番の魔法。

 攻撃のための魔法など軍人か冒険者くらいしか使い道がない物より、世間に広く知られている。

「ですから簡単に言いましょう。投降しなさい。あなた方が行ってることは帝国の親愛なる隣人を傷つける行為にほかなりません。そしていまならあなた方を助けることができる」

 親愛なる隣人とは帝国と友好的な組織やモンスターを指す慣用句である。

 これを傷つけるという事は帝国に弓を射かけるのと同様の大罪。なので首縄の奇術の対象となる。

「うるせぇ。てめぇら。今更あとにゃひけねぇことくらいわかってるだろう。やるぞ」

 そう言って弓をまた構える。

「バカが」

 ドーリーはそう言った。

 そして子ドラゴンの雄叫び。

 呼応するようにドラゴンの急降下。


 そして戦闘。


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