第13話

「やっぱ長旅は疲れる」

 早朝に雄鶏の一声で起きたVはそんなことをつぶやく。

 体が痛い。

 村長曰く朝風呂も入れるとのことだったし、まぁ仕事の前とはいえ多少の贅沢は許されるだろうということで着替えをもって風呂に向かう。


「ドーリーさん。おはようございます」

 同じような考えだったのだろう。着替えをもったドーリーが別の部屋から出てきた。

「あぁ、おはよう。やっぱり温泉?」

「えぇ」

 ここの風呂は個人宅なのに4,5人は一緒に入れる設備がある。

 なんでも公衆浴場がなんかの事情で休業した際などは村人に風呂を貸すのだとか。

「朝から温泉入れるなんてね。来てよかったよ。まだ仕事してねぇうちにそんな事いっちゃ怒られそうだが」

「そうですね」

 前のパーティーでそんな事言ってたら本当に怒られてたはずだ。


 暖かい温泉に二人で浸かったところでVは口を開いた。

 Vの肌は真っ白でいかにも学者という感じ、それに対してドーリーは目立つ傷がいくつもある。

「怒られないように仕事しましょう。今日はどうしましょうか

「まずは村を見て回ろう。どこにどんなのが出るか調べる。必要なら簡単な罠も今日のうちに仕掛けなくちゃな。森や山の方に詳しいやつにも話を聞きたい」

「昨日言ってた引退した猟師なんかどうですか」

「そいつが良いな。あと今回は森や山の中のモンスターを狩るんじゃなくて人里に来て畑を荒らすやつを駆除するのが第一だろ。どの辺の畑に出るかを確認もしたいな。森の中の獣よりそっちのほうが優先すべきだ」

「なら地図なんかあるといいですね。罠を仕掛けたのがどこだったか忘れるなんてことも困りますし、被害状況を確認するマップを作ったほうがいい」

「そうだな。で、情報を集めて明日から本格的に狩りに入ろう。やり方は、山歩きと罠にしようか。毒餌はだめだと言われたし」

 子供や家畜が間違って食べたりすると困るとのこと、そういうことならばとVは

「あまり威力強すぎる、でいいんですかね。罠も避けましょう。間違って村人や家畜がかかるとこまるから」

「でも相手にもよるからな。まぁそんな大物が居るともちょっと思えないが。どちらにしろ今日の下調べでどういう計画を立てるか決めようか。村は結構広そうだから一日かかるかなこりゃ」

「じゃぁこうですね」

 そう言ってVは空中に文字を書いた。

 白く光る文字。

「なんだいそりゃ」

「メモの魔法ですよ。取り出したり閉まったりできるので結構便利なんです。知りませんか」

 ドーリーは見たことがないが、それは当然でこれはどちらかといえば教師や研究者が好んで使う魔法。

 冒険者や傭兵はほとんど使わない。

 その魔法を使って空に文字を書いた。


今日やること

・地図を借りる

・村を見て回る

・畑の被害を確認する

・モンスターや獣の種類を確認する

・猟師に話を聞く

必要ならやること

・罠の設置

明日の用意として

・計画の立案、罠の設置、策定


「これでいいですかね」

「まぁいいんじゃないか。手分けするか。Vは村を見ながら村人から話を聞いてくれ。俺なんかより話やすそうだからな。俺は村を見ながら猟師に話を聞いてくる。昼に酒場で落ち合おうか」

「わかりました」

 そういって二人は温泉から出た。

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