第10話
村についたのは結局、月明かりが畑を照らす時間になってからだった。
「遅くなってすいません」
この御者は謝ってばかりだが
「道草を食いすぎたな」
「僕らのせいでしょう。そう謝らないでください」
二人はそう言って気にしていない。
御者にしてもそういう気はたしかにするが、道草と言っても市場で指をつなげたり道に表れた道に表れたモンスターを返り討ちにしたと言った人助け。彼らを攻めるのは筋違いだ。
それにたいして現金も出せない仕事に応募してくれた冒険者の機嫌を損ないたくない。
「村長を呼んできますが、長旅で疲れたでしょう。馬を家に留めますからそこで待っていてください。嫁が相手してくれますんで」
そう言って御者は自分の家に向った。
御者の家は暖かく居心地が結構良かった。
嫁と子供が三人、子供たちはドーリーがもってきた武具に興味津々。
本人は防具をペタペタ触ったり、兜をかぶる子供たちをにこやかに眺めているが、子供に触らせると危険な物についてはしっかりと手元で確保しているあたりがプロ。
「すいませんね」
そう言ってお茶を出してきた嫁か謝るが、別に本人が気にしていないのだからいいだろう。
「こんな田舎に来てもらってありがとうございます。前までは猟師が居たんだけど、足を怪我してやめてからはモンスターなんかが増えてしまって」
畑が主な収入と生活の糧であるこういう地域では、獣害は結構大きな問題である。
畑を荒らす鹿やイノシシならもなんとかなるが、モンスタークラスになると人を襲うこともあるのだ。
だが、そういう雑魚は面倒が多いが毛皮やうろこが高くうれるわけでもないのでその土地に住んでるというわけでなければ専業になるほどの利益にならない。
そしてこんな田舎だと飯や土地はあるがそこまで現金も出せない。そうなると外の冒険者も仕事を受けることをさける。
やってくるのは、そういうことがわからない素人。なので同業者にも馬鹿にされる。
「いいさ、都会じゃあんま仕事もなかったんだ。宿と飯を出してくれるならありがたいくらいだ」
しかしドーリーはそういったことは気にしない。そういう知識もプライドもない初心者だし、仕事が無いよりはマシというのも事実。
Vにしてもそれは同じだ。一日がかりのこの長旅だったが、すくなくとも空気は美味い。星はきれいだ。追い出されてからどうも憂鬱だったが、これだけでも後悔はしないだろう。
「今日はどこに泊まるか聞いてますか」
「特に聞いてませんが、どうなるんです?」
「寄り合いじゃ集会所をかそうって話になってたんですが、まだ火が入ってないし、布団も敷いてないんですよ。あそこは夜だと夏でも火が入らないと寒いんですが、今から入れても無駄になってしまうでしょ。なので今日はここで泊まっていきませんか。お二人で相部屋になってしまいますけど、部屋も布団もありますから」
ありがたい申し出。と言っても
「ありがとうございます。でも、村長さん名義の仕事なので、そちらと相談してからじゃないと」
Vの言うとおり、雇われの身だ。まずは依頼者に会わなければ。
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