第79話
「痛いですか」
「えぇ、まぁ」
Vは傷をみる。昨日処置したところがまた開いている。他にもいくつかの傷。
密猟者達の口伝で「ドラゴンは羽を狙え」というものがあるそうだが、確かに胴体と比べれば柔らかく矢が刺さる余地がある。
ただ、それにしてもあの動きに対処しながら矢で射貫くにはかなりの妙技か、頭数そろえて一気に不意打ちを食らわせるしかないと思います、とはVがあとからドーリーに言った言葉。
「しかしこの程度なら騎士団の魔法使いなら痛くないでしょう?彼らは中退の私と違って首都の学校をトップででてたりするわけで」
「まぁ、そうですね。でも、呼び出したほうがあなたの為になるでしょう?」
騎士団員が居ないことを確認してドラゴンはそんなことをいう。
確かにドラゴンに気に入られたとなれば、騎士団からの多少待遇もよくなる。かもしれない。わからないが。
「それにあの人達、なにか嫌なんです」
「何かいやってね」
「会えば分かりますよ」
そんなことを言いながら彼は治療を続ける。
「ヴィリアさん」
治療の途中、彼を呼ぶ団員の声がする。
「はい。薬用意してもらえましたか、取りに行きますので」
「こちらから行く」
「良いですか?」
女の声。それに対応してドラゴンに背中にもう一人乗るがいいかと聞くV。
ドラゴンは答えることなく体を下げる。医者のいう事はよく聞くのも礼儀のうち。
もちろん腕が良ければ、という条件。
「お手を、いや失礼。足場を持ってきますね」
「ありがとう。でもいい」
そう言って唱えられる魔法。
空を飛ぶ魔法だ。古典で知名度は高いが扱いが難しい魔法。
Vも一応できるが、こぶし1個分の高さを超えると制御が効かないのでジャンプしたほうが早くて安全。
首都の芝居で出てくる糸で吊られる俳優のように、かっこよく机の上に飛び乗れるくらいにはなりたいと学生の頃からひそかに練習しているが、攻撃魔法と同じように上達は一向にしないので最近はサボり気味。
しかしその女はその魔法を上手に制御し、ドラゴンの背中まで飛んできた。騎士団の補助職、つまり魔法使いなどが着る制服。
「ヴィリア。久しぶり」
「なんとまぁ、奇妙なところでお会いしますね。お久しぶりです」
そんな会話から始まる、一夜の会話。
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