第17話

 ドーリーは村長の紹介状をもって猟師のところへ。

 遠出も覚悟したが、足を怪我してからは公衆浴場の管理人だという話なのでそこまで遠くはない。

 Vは畑を回りながら近隣の農民に被害を聞いて回るということで別れた。ドーリーも時間があれば回る予定。


 Vは冒険者としては気弱なところがある。だから追い出されたわけだが、その気弱さは「冒険者なのに話しやすい」という利点でもある。

 村で農作業をしている農民たちにえらく丁寧に話しかける肌が白い都会風の優男。話してみると村の集会で雇うと言っていた冒険者。

 冒険者というより学者みたいだ。しかもわざわざ下調べをしているという。粗雑な冒険者にそんなやつがいたとは。

 こんな兄ちゃんで大丈夫か?という人には手品程度の魔法や農作業でついたちょっとした擦り傷を治すなんてことをやって実力をみせつつ「戦闘職としては傭兵上がりが居るから大丈夫」と信頼させる程度には世慣れしてる感じ。

 一応冒険者としてやっていたんだ。パーティーを追い出される程度には不適格者だったわけだが。

 そういったわけでよそ者に厳しい田舎の農民から初対面にしては中々の高評価を得ながら、Vは地図に被害状況やモンスターとの遭遇状況を埋めていった。


「兄ちゃん絵が上手いな。絵描きにもなれるぞ」

 名前はよくわからないがこういうモンスターを見た、という農民のために簡単な絵を地面にかきモンスターを特定する作業で農民にそう褒められた。

「いや、ありがとうございます」

 冒険者としてはたいして嬉しくない。


 ドーリーはドーリーでうまくこなしていた。

 傭兵はただ戦争できればいい仕事じゃない。むしろ下調べや物資の調達を卒なく、つまり犯罪や略奪を侵さず、地域住民に不安を与えず、行うことができるやつの方が珍重される。

 もう老人となっている公衆浴場の管理人に村長の紹介状をみせ、猟師時代の話を聞く。

 森や山の地理、獣の種類。大物は居ないか。モンスターはどんなのが居るか。

 話が逸れるところをうまくヨイショしながら軌道修正をし、必要な情報を聞き出していった。

 その上、森や山に詳しい木こりや野草取りの達人の名前まで聞き出すのだからすごいものだ。


「あんた面白いな。今度酒でも飲もうじゃないか」

「そいつはいいな。でもまず仕事しなきゃならねぇんだよ。仕事もしねぇうちから酒なんか飲むわけには行かねぇからな。なに、一つ獲物を獲ったらそいつで飲もうじゃないか。足が悪く立って獲物さばくのはできるだろ?一つ熟練の猟師の腕を見せてくれよ」

 取らぬなんとかの皮算用。だがこいつならまぁオケラってこたぁねぇだろというのが元猟師の管理人の見積もり。

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