第40話
Vは布団に倒れこみ、暖炉の煤で汚れた天井を見ながら口だけ動かして次の相談を始める。
「畑の話が出ましたが、相談した件、考えていただけましたか」
「それなぁ」
相談というのはオーク狩りに爆弾を使いたいということ。
「相手が大物だからって、爆弾はさすがに気軽に許可だせるものじゃないよ」
「オークを確実にやるならそれが一番だ。というか、そうじゃなきゃ俺たちは相手する気ないからあんたらでやってくれ。金を貰って仕事を請け負った側だが、このザマだぜ。そういうワガママだって許されるだろ」
「別に確実にやってもらわなくてもいいんだが、なんかの間違いで死人なんかでないよな?」
村長の気持ちとしては半々だ。
ここに来る前に山菜取りの名人にあったので話を聞いたが、あれ以降毎晩来るのか今日も畑の周辺に現れたらく足跡があったと。
Vが教えたモンスター除けの薬草と息子が苦心して作った動物除けが役に立ったのか、畑の中までは入らなかったようだがそれもいつまで持つか。
そしたら畑は全滅だ。
畑だけならいい。
もし畑を超えたら、次は村にくるかもしれない。少なくとも私達家族はうちに帰ることはできなくなるだろう。
そうなる前に追い払えればそれに越したことはない。だから冒険者にお願いしてくれ。協力できることならうちの息子や娘、私を借り出しても構わん。
しかし、村の近くで夜中に爆弾を爆発させるというのは。
そんなこと言ってる場合じゃないだろう。二人ともモンスター狩りで倒れたんだって聞いたぞ。わたしはこの村でも上から数えたほうが早いくらい長いこと生きてるが、オークだの馬並みの怪鳥だのが村の近くまで来たなんてのは何か普段と違ったことが起きてるとしかおもえない。
そんな感じで長々と詰め寄られた。
老婆の言い分は確かにその通りだ。だが、だからこそ、村長としては気軽に許可を出せない。
村人、家畜、当然冒険者も含めて、人が死んだり怪我をするようなことは絶対に避けたいのだ。
「じゃぁ約束してくれ」
「なんだ」
「まず、絶対に死人は出さないこと。村人とあんたら、そして家畜も含めてだ。オークがとれなくてもいいから、人が死ぬことだけは絶対にさけてくれ」
「それは当然だな。もちろん約束しよう」
「もう一つ、オークを怒らせて村まで連れてくるようなことはしないことだ。殺すにしても追い払うにしても、村に危険が及ぶのは避けること」
「それも当然でしょう。約束しますよ」
「そして最後に、使った爆弾なんかは必ず、必ずだ、全部回収すること。不発弾が残ってるなんてことをしたら組合に言いつけるからな」
村長が出した条件はどれも基本中の基本といえること。
しかし、あえてそれを条件に出さなければならないのが「冒険者に対する信用」を表している。
それに対してドーリーは
「死人を出さない。村に危害を与えない。爆弾は全部回収する。もちろん全部遂行しよう。そのくらいは当然のことだ」
と言い切る。
彼は冒険者としては新米中の新米、しかし傭兵としては20年以上商売してきた。
そのくらいできなければもっと昔に首になっていただろう。
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