第19話
「村長さん。いいかな」
村長が村の幹部と書類仕事をしていた執務室。そこにノックもなしにドーリーとVは入っていく。
「あ、すいません。お仕事中でしたか」
田舎というのはいつものマナーを忘れさせるのか、Vはそう言って平謝り。
「急ぎの用事かい?」
「急ぎじゃないが、ちょっと頼み事があるんだ。村の際に罠を仕掛けたい、家畜や人がかかっても死なないが、獣やモンスターの類を捉えてはなさないやつだ」
具体的には紐を使ったくくり罠。今日は元猟師が、倉庫に転がっていたから使ってくれ、という残り物を仕掛けるが、今日の夜にVとドーリーで追加の罠も作る予定。
「あぁ、その許可を取りたいって話か。なら最初にお伝えしたとおり大丈夫です。村人にはこちらから伝えておくから」
「どこに仕掛けたかわかるように印を付けておくし、帰る際には全部回収するよ。間違って子供がかかっても、まぁ深い切り傷程度で住むやつだ。だからもう一つお願いがあるんだが」
「なんですか」
Vが引きつぐ
「人や家畜が死なない代わりに、モンスターや獣も死にません。ですから僕かドーリーさんが出向いてトドメを指す必要があります。ただ毎日全部の罠を回ってたらきりがありませんから、村人がモンスターなんかが罠にかかってるのを見たら村長さんの家に伝えるように言ってもらえますか。あと怪我がないようにモンスターが捕まっていても村人は近づかないように」
村長は少し考える。
たしかに朝駆けや夜討ちで家の中が騒がしくなるとは言っていた。それはまぁ仕方ない。冒険者という荒くれ者を雇ったのだから覚悟の上だし、最近妙に増えているモンスターを減らしてもらうのだから仕方ない。
罠についても同様。むしろこちらの要望を最大限に汲み取った上にこちらが出し忘れた要件も汲んでくれるのだから文句なしである。
そう優秀なのだ。正直相場より報酬が安いと自分でも察している案件について、しっかりと対応してくれている良い冒険者。
そうなると中々要望を断れない。でも村人は冒険者を雇うことに反感をもっている人も多いが、まぁ、うーん。
「どうだろうか?」
こまった村長は隣で口を挟まず話を聞いていた幹部に聞きました。
幹部、と言っても酒場の女主人の旦那。
「良いんじゃないでしょうか?正直そこまで高い報酬を出せてないのにわがままをいうわけにもいきませんし、最近はモンスターが多すぎるから村民も納得しますよ」
「まぁそうか。そうだな。わかった。それも伝えておこう。いつから罠をしかける?」
「今から」
そう言ってドーリーが見せた紐の束。紐の先の輪に足が入ると紐が締まり、動けなくなる。
「そうなると困るな。仕事が残ってる。君たちの方から近隣の住人に伝えてもらえるかな。紹介状を書こうか?」
「良いですよ。こっちでやりますから、それじゃお手数おかけしました」
そう言ってドアを閉めてさっていく二人。
「なんというかこう、評価に困る二人ですね。有能なんですか?」
「連れてきた御者はすごいと言ってたんだが、なんか組んですぐだって話もあってなぁ。昨日はすぐ寝ちまったし。朝風呂入って朝飯食ったらすぐに出て行くくらい勤勉なんだが、娘はなんか嫌ってるし、悪い人じゃなさそうなんだが、よくわからんなぁ」
これは村長の正直な感想。
この感想は3日後にはがらっと変わっている。
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