第44話

 この夜の狩りに駆り出された元猟師は遠くからオークがいた場所を確認する。足が悪いのだ。失敗したら逃げる必要がある。

 それにここからでもオークの姿は見える。生まれつき夜目が効き目がいいから猟師になった。

「まだ立ってるぞ!」

 オークがまだ二本足で立っていることを確認し大声でそう叫んだ。

 そして調子が悪い足では動き回るのは無理なのでその場で伏せる。片手には長年使ってきた古臭い弓。


「お嬢。仕事ですよ」

「は、はい」

 この夜の狩りに畑の持ち主として参加した山菜取りの名人の老婆と村長の娘は猟師の合図で動き始める。

 と言ってもやるのは手元の光る石をとにかくオーク、というよりオークの一部を照らす光源に向かって投げるだけ。老婆が渡し普段から鍛えている娘が投げるという役割分担

 息子と娘夫婦は止めたが聞き入れもせずに参戦した老婆、オーク狩りに参加したいとさんざん駄々をこねた結果、すこしは現実を知りなさい。と呆れた村長が二人に頼む形で送り出された娘の二人組は、オークの視線が簡単には届かないように障害物を設置して、その後ろに隠れている。


 この老婆、今じゃ田舎のおっかない老婆だが若い頃は首都の裏社会でならした、という噂があるが真偽の程は誰も知らない。

 まぁそう言われてもおかしくない度胸と知恵はある。じゃなければ自分の畑とは言えオーク狩りに参加しようだなんて思わないし、オークが止まる位置を予想して自分が隠れるように障害物を設置するとかできるものではない。

 娘の方は、まぁ世間知らずの田舎者。オーク討伐だと腰に剣などさしているが「そんなもの何に使うつもりだ」と大人たちから叱られてこの仕事。

 それにしても先程の爆音で腰を抜かす勢い。今仕事ができてるのは「野蛮な冒険者なんかにバカにされたくない」という見栄だけ。

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