第8話 冒険者 命燃やして 金稼ぐ
「うぉらあ!!」
まだ鱗の生え揃わない右腕で繰り出した十字槍の穂先が、暴れ鳥竜の首根っこに突き刺さった。
度重なる攻撃でほとんど千切れかかった首を気にもせず、クソでか鳥は見上げるほどの巨体を驚くほど軽快に振り回して体当たりを仕掛けてくる。
「任せろ!!」
後ろにいたメンチの奴があたしと交代で前線に出て、向かってくる暴れ鳥竜に盾を構えて体当たりしていった。
ゴワキン!!と金属のへしゃげる音がするが、メンチは気にもしない。
度重なる衝突で盾を括り付けた左腕が骨ごとひしゃげてるが、鱗人族はそんな事でひるまない。
敵に回すと本気でやべぇが、味方としては頼もしい。
さっきまで戦場に響き渡っていた暴れ鳥竜の叫声はなくなり、代わりに首の付根から塊のように吹き出す血がバタバタと地面に落ちる音が不気味に響いている。
坊っちゃんや元冒険者オベロンの話では、あいつらは体全体が脳味噌みたいになってるらしいからな。
血が完全に止まるまでは暴れ続けるらしい。
「行くべ!」
そう声が響いたかと思うと、シュボッっと空気を巻き込む音と一緒に馬人族のピクルスが投げた投槍が飛んでいき、クソでか鳥の背骨を貫いて地面まで貫通した。
「ピュゥゥゥゥゥゥ!!」
暴れ鳥竜が完全に停止すると共に上空から甲高い声が響く。
真っ黒な風が空から吹き下ろしたかと思うと、暴れ鳥竜の胸元に白い手投げ槍が突き刺さっていた。
中身が空洞になっている手投げ槍の尻からは大量の血が音を立てて流れ出し、朝から追い続けてきた暴れ鳥竜は夕日に照らされながらその生命を星に返した。
空には無口な鳥人族ボンゴの、調子はずれな勝利の歌が響き渡っていた。
「やっぱり暴れ鳥竜はちょっと早かったかな?」
「指名依頼なんで美味しかったんだが、普段は浮き猪の討伐をやったほうが明らかに安定するだろうな」
あたしらの細かい傷やメンチのへし折れて真っ青になった腕をこともなげに治療しながら、サワディの坊っちゃんとオベロンの奴が今日の反省会をやっている
やっぱり魔法使いはやべぇ。
前にいた傭兵団が壊滅する時に魔術学園をクビんなった魔法使いと喧嘩したんだが、一瞬で団の半分が氷漬けにされたからな。
あたしが半分凍りながらも喉笛噛みちぎってやったけど、そのおかげで元仲間に退職金代わりに売り飛ばされてこのザマだ。
やっぱり魔法使いは
普通ならちょっと躊躇するようなことや、周りや神様の目が気になってできないことも、平気でやる、嬉々としてやる。
うちのサワディ坊っちゃんもまともじゃない、治療した奴隷なんかすぐ売っぱらえばいいのに鍛えて戦わせて……
絶対に何かやる気だ、あの若さで自分の軍隊を持つ気なんだ。
マジにぶっ飛んでる、なるべくご機嫌を損ねないようにやらないとな。
「…………ほ……め……?」
「ん?ほめ?ああ、ラストアタックを取ったんだってな。褒めてほしいのか」
「…………ら……す……?」
「いや、なんでもないよ。よくやったな、飴をあげよう」
あーあー、あんな無邪気に撫でられちゃって、べっこう飴まで貰っちゃって。
いっぱしの狩人なのに、精神的にいまいちおこちゃまなんだよなぁ。
でも飴ならあたしも貰おうかな?
おーい、坊っちゃん!
あたしも頑張ったんだけど!
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