第2話 鳥の人 馬に揺られて 狩りに行く

馬の人の方言は適当弁です。




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私が空を取り戻した次の日の朝。


ご主人に「今日から仕事をしろ」とピクルスと一緒に狩り場に送り出された。


渡された装備は浮きイノシシの皮の鎧に、鉄の穂先が交換できる投槍を5本。


どう考えても装備のほうが私の値段よりも高い。


かといって危険な獲物を狙わせるわけでもなく、私達の氏族なら子供でも狩れるような包丁狸や突撃鶏を狩ってこいなんて……


猿人族の考えることはさっぱりわかんないな。




「おい馬の姉ちゃん、仲間が増えたのかい?」




私を背中に乗せて狩り場へ向かう馬人族のピクルスが、大弓を背負って腰に弦巻をつけた男に話しかけられた。




「馬の姉ちゃんじゃなくてピクルスだよぅ、んだべ、ご主人様がお仲間買ってくれただ」




どうも彼女の知り合いのようだ。


彼女はご主人の前では訛らないけど、私の前では思いっきり訛る。


礼儀らしいけど、言葉を偽ってなんの礼儀なのか、馬人族の考えることも全くわかんない。




「…………」


「えっと……お仲間は機嫌悪いのか?」


「ボンゴちゃん言うだども、あーんまし喋らねぇ子なんだっぺ。だどもええ子だで心配なかよ」




考え込んでいたら、ピクルスが私の紹介をしてくれてるらしい。


挨拶だけでもしておこうかな。




「…………ど………も…………」




なんだか猿人族がギョッとした顔をしている、こいつらはいっつもそうだ!


体質的に口が達者じゃない鳥人族もいるのに!




「……あ、いや、どうも……俺ケニヨン、流星のケニヨンって呼んで」


「誰も呼んどらんべそん名前、みんな川流れのケニヨンっち呼んどる」


「…………か……な?」


「こん人一回首長牛に追っかけられて、滝に落ちてギルドから死亡判定受けとるんよ」




ピクルスが人差し指で川流れの脇腹をつついている。


脇の下は人も獣も肉の少ない弱い所だ。


あんなところをつつかせているなんて、ピクルスと川流れは相当親しいに違いない。




「ああ、あんときゃ死んだと思ったよ」


「海まで流されてりゃあよかったんよ。みんな2日も探しよったのに、ケローっと帰ってくるんやもんね」


「わりーわりー、もう川には逃げねぇ。あの日から川で水浴びもしてねぇんだ、水が怖くてな」


「だからあんたちょっと臭いんよ!!」




川流れとの仲が特別いいのかもしれないけど。


ピクルスは冒険者として、周囲との信頼関係というやつを築けているように見える。


私の苦手なことだ。


得意ならあの時も売られずにすんだのかな?


いや、そしたらあのまま死んでたか。


ご主人は何考えるのかよくわかんないけど、その点だけは素直に感謝だ。


私達みたいなオンボロを買って治して仕事させるなんて、噂に聞く神聖救貧院だってやらないのにな。


だいたい働きたくないなんて毎日私達やオベロンに愚痴ってるけど、自分で仕事を作ってるようにしか思えない。


やっぱりちょっと頭が馬鹿なのかな?


まだ子供なのにかわいそう。


しょうがないから将来ご主人が食い詰めたら、私とピクルスが狩りで食べさせてあげよう。


故郷のお祭り料理のネズミの揚げたやつ、ご主人とピクルスは好きになってくれるかな?


私はピクルスの大きな背に揺られながら、彼女とその友人の話を聞くともなく聞いている。


空には白いパンのような雲が一つ。


風は南南西に微風。


磁場も乱れなし。


飛ぶにはいい日だ。

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