概要
言の葉は生命 文字はその陵
戦乱に明け、数多の災害に苦しんだ天武朝を舞台に、誰も見たことのない古事記編纂の物語を描きます。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!青きうすぎぬの哀しみ
『巫の系譜』『人形の娘』、そして本作と読ませて頂いたのですが、もっとも印象深かったこちらにレビューを。
読みながら、私自身も阿礼や真礼の歌に包み込まれてゆくようでした。高く、高く天へ昇ってゆく歌声がおのずと聞こえてくるような。
そしてその歌はどれも哀しく、やさしい。
クライマックスの阿礼とサキの場面がいちばん印象深かったからでしょうか。物語全体が、やわらかな青いうすぎぬのイメージをもって私の胸に迫りました。ひたひたとした孤独、さみしさを感じさせながらも、どこか人肌のぬくもりを持つ、うすぎぬ。
夢のようにうつくしい物語を、堪能させて頂きました。 - ★★★ Excellent!!!澄み切った文が綴る聖と俗の鎮魂歌、鳥肌立ちますよ。
文章は巧い人が書くとスゴイなあ、と思いました。聖と俗、それに記憶と物語を古事記という主題の左右に振り、古代の世界観をあますところなく描いています。
※
文は書く人によりさまざま、熱くも冷たくもなりますが、本作は一貫してひんやりとした温度感と奇妙な静謐さを湛えています。
湛えるという表現が実に似つかわしい、水のように柔らかでひんやりと冷たい。しかし、ただ静かなだけではなく、沁み入るように入り込んで感情を揺さぶる勁さがあります。
以下、ネタバレはしませんが、なるべくなら読まずに本作を体験して頂きたいです、はい。
※
稗田阿礼が口承した物語を太安万侶が筆記してなったとされる古事記ですが…続きを読む