青きうすぎぬの哀しみ

 『巫の系譜』『人形の娘』、そして本作と読ませて頂いたのですが、もっとも印象深かったこちらにレビューを。
 読みながら、私自身も阿礼や真礼の歌に包み込まれてゆくようでした。高く、高く天へ昇ってゆく歌声がおのずと聞こえてくるような。
 そしてその歌はどれも哀しく、やさしい。
 クライマックスの阿礼とサキの場面がいちばん印象深かったからでしょうか。物語全体が、やわらかな青いうすぎぬのイメージをもって私の胸に迫りました。ひたひたとした孤独、さみしさを感じさせながらも、どこか人肌のぬくもりを持つ、うすぎぬ。
 夢のようにうつくしい物語を、堪能させて頂きました。