何度も読み返させていただいているお話です。
東西の混じり合う世界観、壮大な神話の流れを追っているかのような物語の展開、魅力的なキャラクターたち。どれも読むたびに夢中になります。
なによりも主人公いちるのひととなりが好きです。
高潔でしたたか、凛然として強く、悪女めいているかと思えば異性慣れしていないところなどは微笑ましくかわいらしい。なんだかんだ情があり、困っている相手には手を差し伸べずにいられないところも魅力的。
このように強くも孤独だった彼女が恋を認め、自分を認め、硬かったつぼみがほぐれるように変わってゆくさまは匂い立つようにあざやかです。
そうして咲き誇る花のかがやきを見つめるとき、ラストの台詞「花は零れ、枯れ朽ちてこそ」のまばゆさが際立ちます。花のかがやきは一瞬ですが、同時に永遠でもある。
その果てのなさに救われ、これからも彼と彼女の物語が続いてゆくのだなあと静かな感動を覚えます。
最後まで読み終えた先にある、このさわやかさにぜひ浸ってみてほしい一作です。