第5話 アスペルガーは独自規格のパソコン

 第3話でも述べました通りアスペルガー症候群には「こだわり」が非常に強いです。


 社会的に正しいことであっても自分の中で納得がいかない物は受け入れられない。

 「正しいこと」よりも「納得がいくこと」の方が何百倍も重要で納得がいかない物は頑として受け入れない。

 この辺、アスペルガーはいわゆる「独自規格」で動いているパソコンのようなものだと思います。



 例えばお箸の持ち方は既に正しい持ち方があるんですがそれを否定して自分が考えた持ち方を貫き通すようなものです。

 その自分が考えた持ち方が「正しい持ち方に比べて使いにくかったとしても」良いんです。

 「良い方法」や「正しい方法」よりも「自分の方法」を優先してしまうのがアスペルガーの特徴です。



 私はこだわりに関しては比較的まともな部類というか、社会性に問題がある程酷くは無いという程度ですが、人によっては

 「帰り道の曲がり角を一つ間違えるだけで、あるいはいつもの道が道路工事で通行止めになってしまうともうどうしていいか分からずにパニック」を起こしたり、(帰り道にこだわりがある)

 自分のやっている作業を中断されると途端にパニックになったりショートしたかのように頭から吹っ飛んでしまうという人も中にはいるそうです。(作業手順にこだわりがある)

 あと机に置いてある物の位置をちょっとでも変えられると火山が噴火したかのように怒りだす気難しい上司もこれかもしれません。(位置にこだわりがある)



 このこだわりが良い方向に伸びると腕はいいけどどこか気難しい職人になります。一般的に職人というのは融通が利かないというイメージがありますが、この辺に職人には頑固者が多いという理由があるでしょう。

 まぁアスペルガーは職人に向いているというポジティブな面と、職人ぐらいしかまともな道を歩めないというネガティブな面の両方があると思いますが。


 このこだわりが悪い方に伸びてしまうと「ルールを守れない」厄介者になってしまいます。

 何せ「ルールを守る」よりも「自分が納得する事」を優先させてしまいますのでルールを守れない、守りたくてもどうしても守れない人になってしまいます。行きつく先は解雇でしょう。


 このこだわり、正確に言えば「いつもと違うものが受け入れられない。恐ろしくて恐ろしくて仕方ない」というのが当事者の本音なのだと思います。

 健常者に分かるように言えば「ある朝目覚めたら言葉の通じない外国に身ぐるみ一つで放りだされた」のと同じくらいの恐怖だと思います。

 もう怖くて恐ろしくて1歩も動けなくなります。

 そのため「いつもと違う」という想像を絶するほど耐え難いストレスを和らげるために同じ行動を繰り返す。それがこだわりの正体なんだと思います。


 私は働ける分まだまともな方なんでしょうがこだわりが強すぎてそのせいで働けない程強烈な人の生活、それこそ曲がり角を一つ間違えるだけでパニックを起こす人の生活の苦しさはもはやアスペルガー当事者である私にも想像できない位きついんでしょうね。

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