第6話 そこにあるあれ取ってきて←地獄だ!地獄を見た!

 聞いてくれ。俺は地獄を見たんだ……上司の「そこにあるあれ取って」がまた始まったんだ!

 ああああああああ地獄だ! 地獄を見た! 「こそあど」地獄ー!


……ついに壊れたか。とお思いでしょうが私の実体験です。


 アスペルガーの人は指示代名詞(これ、それ、あれ、どれ)やあいまいな表現を大変苦手としています。

 「これをあそこに置いといて」と言われても「これ」が何なのか、「あそこ」がどこなのかさっぱりわかりません。もう



 「座 標 で 示 し て く れ !!」

 「ユ ニ ッ ト I D で 示 し て く れ !!」



 と言いたくなるくらいに混乱します。


 もう座標とかIDなんて言葉が出てくる点でかなり女子力ならぬアスペ力高いハイクオリティな発言だと思います……何の自慢にもなりませんが。


 他にも「重い荷物は2人で持って」と言われても、どこからが「重い」荷物なのかがさっぱりわからない、出来るのなら重量計で計って○kg以上は2人で持つ。ってしてもらわないと分かりません。



 私が常日頃健常者を凄いと思うのは本当に「これ」とか「あれ」で通用してしまう所です。

 何だその阿吽の呼吸は!? 何でわかるの!? あんたたちもしかして超能力者でテレパシーでも使って会話してんの!?

 ……と思ってしまう事が多々あります。いやもう冗談抜きで本気で思っております。


 これはおそらく発達障害を抱えている人は「共感」というものが「一般的に言えば」分かりにくいからだろうと思います。

 「相手の立場に立って考える」というのを非常に苦手をしており、例え全く初めての経験だったとしても健常者にとってはとりあえず相手の立場になるというものが簡単に、それこそ呼吸するのと同じくらい簡単に出来るので「これ」とか「あれ」というあいまいな指示でも分かるのだと思います。


 私からすれば頭の中を覗いて、「ああなるほどね」とやっているのかと思えるくらい、それこそ「そんなあいまいな言葉でコミュニケーションしても伝わるわけないだろ!?」とか「仕事に支障が出るんじゃないのか!?」と思ってしまう位あいまいな言葉で仕事が成り立つのが摩訶不思議で仕方ありません。

 世界の7不思議です。センスオブワンダーです。SFです。いや冗談抜きにSFに出てくるテレパシーとか使ってるんじゃないのかと思う位ですもん。正直な話。



 それくらいアスペルガー当事者にとっては指示代名詞で地獄を見ております。それはそれは想像もつかないような地獄を味わっております。

 今日も「座標で示してくれ!!」と叫び声が聞こえる……のは俺だけか。

 というわけなので発達障害だと思われる人がいるとしたら極力「これ」とか「あれ」は使わないようにしてください。

 メチャクチャ混乱しますので。

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