概要
どんな花より馨しく、どんな美酒よりも甘露な毒の味
甘い香りと、藤紫。
どこを探せど陽光は見当たらない。天は覆い尽くされ、視界は全て、甘い香りの源である藤の花。その藤花の群生から、ひらひらと舞い落ちる藤色の花弁。それが行き着く先は、白い柔肌の上。耳をすませば、ざわめく藤花達の話し声も聞こえてくる。
幻怪な藤の花に囲まれた槐(えんじゅ)は、手を伸ばすも――景色はふつと変わり、藤の花なぞ何処にもない格子で囲われた座敷牢の中だった。
幼い頃から座敷牢の中で育った槐は、そこから一歩も出る事は叶わず、日々血を採られていた。槐の血は特殊で、毒と言われいるが、槐にはその自覚はなかった。
日々は虚しく、慰めは藤の夢だけ。
そんな時、藤の夢に見知らぬ男が現れる。男にはまだらに鱗があり、どう見ても人ではない。そんな鱗の死にかけて今にも事切れそうだったが、槐に
どこを探せど陽光は見当たらない。天は覆い尽くされ、視界は全て、甘い香りの源である藤の花。その藤花の群生から、ひらひらと舞い落ちる藤色の花弁。それが行き着く先は、白い柔肌の上。耳をすませば、ざわめく藤花達の話し声も聞こえてくる。
幻怪な藤の花に囲まれた槐(えんじゅ)は、手を伸ばすも――景色はふつと変わり、藤の花なぞ何処にもない格子で囲われた座敷牢の中だった。
幼い頃から座敷牢の中で育った槐は、そこから一歩も出る事は叶わず、日々血を採られていた。槐の血は特殊で、毒と言われいるが、槐にはその自覚はなかった。
日々は虚しく、慰めは藤の夢だけ。
そんな時、藤の夢に見知らぬ男が現れる。男にはまだらに鱗があり、どう見ても人ではない。そんな鱗の死にかけて今にも事切れそうだったが、槐に
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