夢か現か。毒か薬か。藤花の香る和風ファンタジー異類婚姻譚。

毒にも薬にもなる自らの血を里人に採られ続ける主人公の槐。
痛々しく瘡蓋を重ね、耐えるだけの彼女に訪れた出会い。

なにもできそうにない彼女に対する周りの緊張感。
妖しくも不気味な藤の花。
正体のわからない優しい鱗の男。

相反する状況がとても幻想的で、ずっと読んでいる側が幻惑を受けているような気持ちでした。
特に、後半の斎郎視点で槐の取り巻く環境や謎が明かされていくところが好きです。
槐自身はなにもしていないのに、視点が変わると印象が変わっていきます。
人並みでどうしようもなくて、でもきっと臆病で根は優しいままの斎郎の気持ちがとても理解できてとりわけ好きでした。もちろん、ヒーローである叢雲さんも決めるときに決めてくれます。

水や雨、酒。そして花。古き信仰を題材にした和風ファンタジーが大好きなので、とっても素敵な読了感でした。おすすめです!

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