まず惹きこまれるのは作者様の文章の美しさです。硬派で端麗な文は、これをwebで読んでいいのかと驚嘆するほど。
こういう硬派堅実な美しい文章を目指す方は私だけではないはず……
物語は中国に関する知識をもとに描かれており、私は封神演義や十二国記を読む時と同じ感覚を覚えました。
名家に列し、人とは異なる性質を持った主人公と、彼の隣にいて支える龍人族の二人組は信頼関係で繋がれ、しばしば垣間見える幼馴染ならではのやりとりが魅力。
そして現在連載のところまでで現れた不思議な治癒力を持つ娘。
人々を襲う病の不穏な闇は、いったい真実はなんなのか。
娘も知らぬ娘の正体とは。
主人公たちがこれから巻き込まれる運命は何か。
気になります。
そして、繰り返しますが、文章に酔いしれる作品です。
国のおわり、丹省にある白仙山の向こうを夢見た蚩尤と雷堂。
それから十数年後。雷堂が蚩尤(しゆう)の従者になるべく、なんとか科挙に合格し、官吏となっていた。
一方菫省では、不思議な力を持つ少女黙蓮が、旅人であり龍人族の明朙を助ける。それを機に様々な人を助けた彼女は、白龍を連れて現れる『天上聖母』と呼ばれるようになる。
それからさらに時は過ぎ、その噂は二人の耳にも届き初め…。
不思議な力を持つ者たちが生きる国。
神が守り、神が封じる陽皇国。それゆえに、この国の人間は外へ行けない。はたして、蚩尤の向かう先は――
季節と自然、神と人の営みを感じさせる美しい風景描写と、魅力溢れる人物たちで織り成す、長い時間をかけて語られる物語です。
陽皇国最北端の丹省に立ちはだかる白仙山には秘密があった。
体格に恵まれた蚩尤と雷堂は、武官となる武科挙ではなく、文官である官吏となる科挙を目指していた。
それがふたりの目指す道への第一歩となるからだ。
さまざまな経験を経て、丹省で地歩を固めた蚩尤と雷堂は、重要な任務を任される。
果たして、ふたりは任務を無事に果たせるのか。
そしてふたりの大望は実現できるのか。
重厚な中華風ファンタジーは、さらに深い謎を築きながら物語の奥へと読み手を誘います。
中華風に限らずファンタジーでは常識ですが、貴族の爵位の上下は上から「公侯伯子男」となっております。「公爵」は王の直下で、「男爵」は騎士が最初に授かる爵位です。本作もそこを把握していると、人間関係が頭に入りやすくなりますよ。
ぜひ緻密で質の高い描写で織りなされる物語にご期待くださいませ。