捕らえているようで、囚われているのは誰だ。

鬼をも殺す酒『神便器毒酒』を作る里に、毒となる血を持つ槐(えんじゅ)はいた。
彼女は一人格子の中に閉じ込められ、血を取られ続けていた。

「助けてくれないか。血が必要だ」

そんな中、彼女の藤紫の夢に現れたのは、鱗を持つ男叢雲。
物のように扱われる日々に現れた人ならざるものに、槐は温もりを求める。例えいつかは思い出にしかならないとしても。

そんな中叢雲は、彼女をここから出すと言い出し、「夫婦の契り」を結ばないかと提案する。
奇しくも槐に複雑な想いを持つ杜氏斎郎も、かつて同じ提案をしていた……

クラクラするような甘い香りと、どこまでも続く藤花の世界。
槐を縛っているようで、縛られているのは誰なのか。幻想的で蠱惑的な和風ラブストーリーです。

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