第34話 まだ終わっていないでごじゃる(9)

「ふむ、それしかないで、ごじゃる、な」

「ですな……」

「…………」


 俺の提案に対して爺二人は取り敢えず納得をしてくれた。


 そして侍の兄ちゃんはやはり臣下の身だから無言で返答をしない状態ではいたけれど。俺の付き添いの兄ちゃんは三人の会話を聞く耳立てよく聞いているように見えたから、マジでこの人は誰だろう? と思いつつ。


「上杉憲政公がこちらを裏切たり、北条家に敗戦して逃亡するようなことがあれば大変なことになると思うので、常陸の佐竹氏とも同盟を結んでみてはどうでしょうか、御方さま? それと里見氏との同盟の方もお忘れなく」


 俺は平に、平にと今川の親父さまへと念には、念を入れた策を提示したのだ。


 だって上杉憲政公方さまは北条氏康に戦で負け、長尾景虎を頼り、家督を譲り、と名を変えるのは未来人ならば結構しっている人も多々いる有名な話なので、俺は何故かあの時に心優しいと言うか? あの馬鹿殿さまみたいな今川の親父さまのことが憎めず、ついついと未来人知識をさり気なく教えてしまう。


「うむ、分かっておるで、ごじゃる」





 まあ、そんな白塗り、お歯黒の麻呂爺は少しばかり拗ね、面白くない顔をしながら言葉を返してきたと思う?


 だから俺も、あっ! 余計な案を提示し過ぎたと、一言多かった自戒しながら、不味いな……と思えば。


「あっ、はははははは。御方様、良かったですな、良い婿が来られて、これで今川家も安泰で御座るな、あっ、はははははは」


 太原雪斎和尚さまが俺と瀬名姫の祝言のことだろうな? と思うことを告げ、高笑いをするから。

 俺と瀬名姉さん女房との婚姻は。俺が豊臣秀吉達と交換される前から決まっていたと言うことなのかな……? じゃ、今川の親父さまは、俺が考えていたよりも早く、自分の姪である瀬名との結婚を考えていたことになるな? とも思ったよ。


 だから生前はアラサーだけれど、私立の大学へと進学した俺には、国の奨学金の学費ローンも残っているし、彼女もいなし、車もないし、小さな会社のサラリーマンだし、株の投資や仮想通貨の投資などの財テクスキルも持ち合わせていない。


 まあ、そんな俺だから彼女を作るのも結婚するのも先ずは国の奨学金のローンの返済が終わってからだよな~! と思っていた。


 でもそうなれば? 俺の年齢が今度は40歳近くなるから彼女もできないだろうし、結婚もできなと思っていた。


 だから俺は生涯孤独で、孤独死をするのだろうな? と諦めていた人生だったけれど。

 俺はとして生まれ変わり、捨てられた、はしたが、織田信長と言う名の彼女ができてラブラブできた?


 そして今度は今川の親父さまから嫁を頂ける……。


 それも一応は今川義元公の義理の娘……。異世界ファンタジーのラブコメらしく、姫さまだぞ! 令嬢さまだぞ! お嬢さまだぞ!


 まあ、多分、クソ生意気なツンツン姫さまだと思うけれど。俺はあの吉の愛と言う名の虐待! 折檻! に耐え続けた男だから、ツンツン姫さまの我儘には耐え忍ぶことができるはずだ! と思ったから。


 あの日の俺……。初めての嫁を頂けると悟ることができた俺は、今川義元公と太原雪斎和尚さまとの初の顔合わせの日であろうとも、二人に対して敵意を募らせ、いつかはこの駿府を俺が食らってやる。特にこの駿府は俺が徳川家康になれば隠居の地として暮らす訳だから。最終的には俺の物になる領地だから、早めに手に入れてやる! そして日の本の美女姫は織田信長も含めて俺の物だ! 豊臣秀吉には絶対に渡さんからな! わっ、はははははは! と野心、野望を募らせる訳ではなく。

 俺は元サラリーマンらしく、社長令嬢を頂ける今川会社の社長の義父に対して感謝、感激……。今後は今川会社のために、この身を削り働きますと誓うほど。あの時の俺は瀬名を嫁にもらえることを心から喜び、感謝するのだった。




◇◇◇

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