第169話 あとがき(8)

 俺は朝比奈泰長泰長、何のようだ? と優しく尋ねる前に。


朝比奈泰長泰長、お前なぁ~! 今日は俺の元服! 烏帽子えぼしの祝いの日なのに! 朝比奈泰長泰長~、お前は何で~。自分の彼氏の大事な日! 祝いの席に参加しないのだ! お前は可笑しいのか? それとも、もう俺のことが嫌いになったのか?」


 俺は可愛い瀬名新妻さまが真横にいるのを忘れて、朝比奈泰長朝比奈家の悪役令嬢さま……。俺のもう一人の年上彼女へと不満をブゥブゥと告げるものだから。


「ごほん!」


 俺の真横で可愛い瀬名新妻さまが空咳するから。俺の顔色は一瞬で青ざめ。


「せ、瀬名、ごめん……。あの、これは、あの、これは、えぇ~と」と。


 俺は瀬名新妻さまに何て言い訳をしたらいいかわからないので、困惑しながら言葉を呟くと。


「殿~、今更朝比奈泰長泰長との関係を慌てて隠されても、わらわはか・な・り以前から二人の関係は知ってはいますから、御心配なきよう」


 プンプン! と俺の可愛い瀬名新妻さまは不満を告げてきたので。


「すまん、今川氏真瀬名……。俺が悪いんだ……。俺が朝比奈泰長泰長の寝所へと夜這いをかけ、強引に手篭にしたんだ……。本当にすまない……。だから今川氏真瀬名朝比奈泰長泰長叱らないでくれ。頼むよ、朝比奈泰長泰長……。全部俺が悪いのだから……」




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