第20話 未来人の俺的な考え方は? (2)

 だから俺は強気の言葉で海千山千の爺達二人へと猜疑心の目を向けられようが、関係ないぞ! と。俺のことを睨みたいのならば、好きなだけ睨み続けろ! と言った思い出で、これから世話になる家! そして織田信長への復讐心を込めてパンチのある話をしてやり、終わると。


「……でもあの御方……。武田信玄公の諏訪家を滅ぼした後がいけません……」と、にへらと笑いながら。

「あの御仁はいくら容姿が自分好みだったからと言っても、犬畜生と変わらぬこと……。そう自分の姪とも言える立場の諏訪御料人を側室に迎い入れ、子を身籠らせ、産ませると言った悪行……。人の道、道理……。義に反することを平然とおこなった鬼のような人物でございます」と更に力強く告げ。


 ふぅと俺は一息いれると。


「……この日の本の民が今求める人物! 英雄! 賢者は! 智謀に優れ、戦が上手な勇者を求めている訳ではなく。義や情に厚く、公約を反故にしない、正義を貫き通すような賢者を求めているのだと僕は思うのです! またそのような正義感溢れる大志を抱けるような人物でないと、天は味方をしないと僕は思うのです。だから御方さま……。できればいつ裏切るかわからないような虎を飼うのはお辞めください」


 と、俺はここで演技……。自分の頭を深々と下げながら。


「信玄公は必ずや我が今川家と同盟を組もうとも、それは一時のことで……。必ず今川家が弱体化をすれば、この駿河の海と塩……。富士の金山を狙い、南下作戦を実行してくるに違いないと僕は確信します! またそうなれば不意を食らった我が今川家や駿府の民、百姓は甲斐の虎に蹂躙され、武田菱に平伏すようになってしまいます。だから御方さま! 御考え直しください、おねがいします」


 俺は長々と子供らしくない話しを爺二人へと警告のように告げる。


 そう俺は前世の日本の過去に起きた史実……。今川義元公が織田信長公に桶狭間で討たれ。その後徳川家康が、これを好機に岡崎城で独立……。織田信長と同盟……。


 そして主家だった今川氏真公と敵対関係……。対立が始まると武田信玄は織田信長と婚姻関係を結び同盟……。徳川家康にも言い寄り提案……。今川家をお互いで攻めて東海道を二分しようと密約を持ちかけ誘う。


 それに徳川家康が気持ちよく乗れば今川だけではなく、北条とも同盟を破棄して駿河を一気に攻め込み、自分の領地へとしたはずだ。


 だからこの世界でも次の今川の当主が暗愚の氏真ならばいくら同盟をして、信玄公の御機嫌取りをしようとも、今川の二大巨頭……。義元公と太原雪斎和尚が他界をすれば信玄公は海と塩、金山……。そして水軍欲しさに駿府へと風林火山の旗を翻しながら攻め込んでくること間違えない。


 それが武田を信じ続けて無防備で攻められると、今川館では防ぎようがないのと。仮に強固な城を慌てて建設したとしても、あの戦上手の怪物を俺でも、前世同様、防ぎ、止めることは不可能だと思う?


 だって関東の北条氏もあの堅固小田原城で立て篭もるしか手がなく、徳川家康は敗戦、敗走……。糞尿を漏らすほど畏怖したらしいと逸話も残っている。


 それにあの覇王織田信長も武田信玄公との戦は怖くて回避を続けたほどの怪物を後方の憂いなく信濃攻略を容易く終わらせて、南下政策へと方針を変えさせない方が、未来人の俺的にはいいような気がするから。


 俺は迷わず爺二人へと力強く、武田家との同盟案は辞めた方がいいと提案をした。


 しかし爺二人は俺の提案を聞き終えると、「う~ん」と考える人になり唸り始めるだけだ。



 だから俺は「御方さま?」と苦笑いを浮かべつつ、自分の顔まで引き攣らせながら声をかけた。


 しかしあの時の今川の親父さまは俺の問いかけに対して無言……。雪斎和尚さまをチラリと見詰めるだけで無言のまま……。


 となれば? 俺はやはりガキの分際で大人二人に対してよからぬことを言ったにちがいないと思うから。

 俺は自分の額や頬、背に冷や汗をたらりとかきつつ、罰を受けることも覚悟する。


 しかしだ俺が自分の思い……。提案と策を告げた男は只の男ではなく、この日の本の戦乱を徳川家康豊臣秀吉織田信長よりも早く鎮静させ、日の本の民を安定した生活へと導こうとした英雄! 勇者! 偉人なのだから。人を見る目は確かでね。


「良いのですか、御方様……。こんな子供の前で自分の夢物語もされても?」


 雪斎和尚さまが意味深な言葉を今川の親父さまへと尋ねると。


「別に麻呂は構わん……。教えてやるのじゃ、雪斎和尚……。麻呂は竹千代の話にも興味がある……。そしてこやつの意見も聞いてみたい気になったで、ごじゃる……」


 あのさ、今川の親父さま……。そんな言葉でみなに話しをする方が面倒ではないのか? と、あの時の俺が子供ながら思い、悪態をつきたくなる物言いで、今川の親父さまは雪斎和尚へと気だるげに告げれば。


「じゃ、竹千代殿。一つこのなまくら坊主が貴方様に尋ねますが。我が家の御方様は、遠縁に当たる大内義興公のように京へと上がり、この戦乱の世を治め、日の本に平和をもたらせたい思いがある」

「そうなのですか」

「ああ、そう思っておられるのじゃよ、竹千代殿……」

「それは凄いではないですか!」


 俺は今川の親父さまが遠縁に当たるのかな? 西の大大名で足利将軍に代わり、日本国の王の証を持ち、今の中国と貿易までしていた大内義興公のように京に上り、戦乱の世を治めたい思いがあることは知っていたのと。


 この時代の頃には多分? 西の大大名……。九州探題、西日本探題の二つの探題職に、大宰府の祭事や厳島の祭事の催事までしていた大内氏も家臣との内紛と天下の智謀の将毛利元就公の台頭で衰退をしているか? 滅んでいる頃だと思う?


 だから今川の親父さまは京に近い西の毛利氏や山陰の覇者尼子氏に後れをとるのが嫌だから慌てているような気がする? 


 またそんな爺だから織田信長に後れをとるような失態……。桶狭間にて討たれるような失態を起こすようになったのでは? と思うのと。

 俺自身も本で見て読みしたのか? 映画? ドラマ? ゲームの攻略本だったかな?


 まあ、俺自身も過去のことで忘れたけれど。今川義元公が桶狭間で休息をとっているのを知らせ、正確な位置を教えたのは武田信玄公ではないのか? と言った逸話もあるらしい。


 それか俺、徳川家康が服部半蔵を使って教えたと言う逸話も存在しているけれど。(笑)


 まあ、そんな事情まで未来人の俺だから知ってはいるけれど。俺は爺二人の前で大袈裟に素知らぬ振りをしてみせるのだった。





 ◇◇◇





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