第22話 では代案を出せと言ってくるでごじゃる(2)

「越後の長尾景虎さまなど、どうでしょうか?」

「……ん 長尾景虎?」


 あの時の俺は、今川の親父さまに雪斎和尚さまの提案に代わる代案を提示するようにと急かされている状態だった。


 だから俺は武田信玄甲斐の虎ではなく、上杉謙信越後の龍はどうか? と、今川義元東海道一の弓取りへと告げてみた。


 しかし、あの時の今川の親父さまは俺の提案を、聞き首を傾げる。




「竹千代殿、何故長尾景虎殿でござるか? この駿府と越後とは距離もかなり離れているではござらぬか? だから駿府と越後が同盟を結んでも、何の意味もないのではございませんか?」


 今川義元が首を傾げるから、太原雪斎が苦笑いを浮かべながら俺に尋ねてきた。


「そんなことはございません」


 未来を知り、武田信玄公と上杉謙信公の、竜虎の壮絶な戦いが長きにわたって続くこと……。


 甲斐の虎は、越後の龍にライバル、宿敵だと認められ、気に入られたことで、織田信長に京への上京を許し、後れをとってしまったと告げる人もいるくらいだから。武田家を上と下から強襲──挟み撃ちにできる立場にいる今川家と長尾家が同盟を組むのは悪いことではない。


 だから俺は雪斎和尚さんへと言葉を返すと、今川の親父さまへと向きと視線を変え。


「……今武田信玄公は、信濃へと進出して村上義清公や長尾景虎公と争っている最中だと思います。だから今川家が長尾家と同盟を組めば武田信玄公は後ろが気になり、本腰を入れて信濃平定ができなくなる訳でございます。だから村上家や長尾家も今川家との同盟は決して悪い話しではないと思います」と力強く説けば。

「それに武田信玄甲斐の虎は智謀にも大変に優れるが上に、先の先を見越して平然と他家を裏切り、敵を沢山作りますが。上杉謙信越後の竜は自分や戦に関しては美と名声を好み、追及するところもある、大陸の古の猛将覇王項羽のような人物だと思うのです。だからあの御方は義に熱く、他家を欺き、裏切るようなことは決してないと僕は思うのです。御方さま……。だけど武田信玄公は古の漢の高祖劉邦や天才軍師張子房のように、勝利のためならば同盟の公約もその日の内に破ること平然とおこなうような知者と思われます。だから後々国士無双と世に謳われた韓信大将軍が高祖ではなく、覇王項羽の密約に乗るべきだったと後悔しながら、嘘偽りの罪を着せられ、斬首される時に嘆いた大陸の古の史記にも書いてあった内容通りに。今川家の後々を考慮して両家を比べると、長尾家と同盟を組まれることが得策であり。京に上る際も長尾家に武田の背後をついて信濃へと進出してくれと頼めば、甲斐の虎は今川領を攻撃することが不可能になりまする、御方さま!」


 俺は今川の親父さまへと未来の歴史通りに、武田信玄甲斐の虎は信用できない人物……。必ず駿河の海と塩……。金山を奪いにくると説いた。


「うむ~、なるほどでごじゃるなぁ……」


 あの時今川の親父さまは、この俺さまの未来的な考え方と、遠回しな今川家の滅亡を説を、最初は怪訝な表情しながら肘をつき、耳を傾けていたけれど。最後にはガキの俺の話に対して真剣に耳を傾け、聞いてくれた。




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