第25話 誤魔化すでごじゃる(2)

「確かに雪斎和尚の言う通りで、ごじゃるよ。麻呂は、あの姫を只のおおうつけと思い込んで織田信秀の事を舐めていたで、ごじゃる、が。あやつが自分の娘は天下一の知恵者じゃと褒め称えていると聞き。信秀も戯けの大噓者とばかり思い嘲笑い、侮っていたで、ごじゃる、が。竹千代の知識力を聞けば。奴が言っていたのは自分の娘への過大な評価の惚気話ではなく本当の事のようじゃのぅ~、和尚……」

「えぇ、御方様の言われる通りで御座います。末が恐ろしい」

「うむ、和尚の言う通りで、ごじゃる。麻呂も織田信秀は猪武者だから、こちらが策を擁して先手、先手を打てば対処の仕様もあるが、織田信長あのうつけ姫に代が変われば用心深く事を運ぶ方がいいで、ごじゃるな。あのうつけ姫は、自分の将来の夢、想い、自分の才を隠す為におおうつけ、傾奇者のフリをして敵を欺いていると言う事が、今竹千代の話を聞き、麻呂は理解ができた」

「真で御座います、御方様……。あのうつけ姫と対峙をする時は、こちらも気を引き締めて場に当たる方が宜しいかと……」

「うむ、そうするで、ごじゃる、和尚……」


 俺の噓偽りを聞いた爺二人は顔色を変え……と言っても? 俺が二人へと告げた言葉は全部が全部嘘偽りではなく、未来から転生した俺の二人への忠告に近い言葉……。メッセージだと思っている。


 だって今川義元東海道一の弓取は弓取りらしくない行動……。自軍の兵隊の数の多さに酔いしれ織田信長を嘲笑い、侮り、慎重さに欠け、自軍の隊列を長く伸ばし、本陣を孤立させる失態を犯した上で、大雨の視界が効かない中を自分が雨に濡れるのが嫌だからと休憩をとり。


 その一瞬の隙を織田信長に狙われ、奇襲を受け、自分が躯になる失態を犯して、その後今川家は武田や俺の侵略に耐え切れなくなり領地もなくなる。


 そして氏真は俺の客人扱になるほど、東の今川も西の大内氏と同じく衰退をする落ち目になる訳だから。

 あの時の俺の話は、今後の爺二人の織田家への対処方のよい教訓になると思うから有難く思えと、あの時は思った。


 だからその後今川の親父さまは歓喜した。


「でかしたぞ、竹千代! 麻呂は今ほど、お主をあの者と交換して良かったと思った事はないぞ! でかした! でかした、竹千代!」


 あの時に今川の親父さまの話を聞いた俺は、最初はまだ日輪さまの落胤だと噂をされている豊臣秀吉を手放し、岡崎の国人領主の息子を迎え入れたことに後悔をしていたみたい? と説明をすれば。じゃ何故今川の親父さまは策を弄してまでも俺を自分の手元に迎えいれたかと申せば?


 俺の産まれ故郷……。故郷ふるさとの岡崎に住む気の荒い岡崎衆が重い税と言うこともあり、度々一向一揆みたいな反乱を犯すは。自分達の徳川家康大将が織田に居るのならば、織田方に味方をすると言った、敵国との密約も交わそうとしていたみたいだから、雪斎和尚の提案で織田の安祥城を攻めて織田信広を束縛、豊臣秀吉とセットで織田の爺と交渉し。以前から俺と織田信長との仲をよいように見ていなかった織田の親父さまに。俺達二人の仲はあっさりと切り裂かれたと言う訳でね。


 まあ、これも歴史の通りだから、俺も抗わず諦めることにした。どうせ吉の奴も俺をあれだけおもちゃにして弄んだ癖に、あの阿保は躊躇わず捨てた訳だから。俺は吉のことを許さねぇのと!


 まあ俺の徳川家康としての噂通りの激しい性欲は、この今川館にいるだろう史実の瀬名姉さん女房に尽くしてもらうから、いいわ~! あんな女なんかいらねぇやぁ~! と俺は意固地に思えば、また自身の両目がシクシクと潤みそうになるぐらい、吉はアイドルや女優になれるくらいの麗しい少女だったのだ。


 だから俺がまた自戒……。後悔の念を抱き、嘆き下を向くのだ。




 ◇◇◇





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