第27話 まだ終わっていないでごじゃる(2)
「……ん? トイレ……? トイレとは何で、ごじゃるか……? 和尚はトイレなるものを知っておるか?」
「いいえ、私もトイレなる物がどんな物なのかは存じませんが……。竹千代殿、トイレとは何でございますかな?」
俺がついついボケてと言うか? ついつい癖で……。
そう近未来の日本から転生した神さまのような徳川家康さまだから、俺はついついと未来語をポロリと口から漏らす失態を犯してしまう。
でも織田家……。
「うん、いってこい!」とか?
「竹千代漏らすな」、
「竹千代、おしっこを縁に飛ばしてトイレを汚すなよ! わかったな?」としか言わない。
それにアイツ自身も「トイレ~、トイレにいってくる~。だから竹千代~! アーシがトイレに入って用を足しているのを覗くなよ! わかったな、スケベ狸!」と俺に悪態をつきながら厠へと向かっていたから。俺自身もそれまでは悩むことはなかったけれど。
爺二人の困惑した様子の問いかけに対して、あの時の俺は咄嗟に。
「織田の吉姫さまはバテレン好きの金髪碧眼美少年好きですから。厠のバテレン用語であるトイレと普通に尾張城内で家臣の者達も言っていましたから、僕自身も厠のことをトイレと覚えてしまいました。本当にすいません……」
と額と背に冷や汗をかきながら、苦笑いをしつつ必死に言い訳をした記憶がある。
「ほう、なるほどの……。そんなにも織田のうつけ姫はバテレン好きなのか?」
あの時の今川の親父さまは、俺にトイレへといくようにと指示をだした癖に、そのことを忘れ、
「はい! 織田の吉姫さまは、大変に頭もよく、好奇心旺盛な姫さまですから、バテレンの新しい物、珍しい物には目がなく、豊後国や博多から堺へと南蛮の品が入れば、取引先の商人に尾張へと品を運ばせ購入するほど好きでございます」
「そうで、ごじゃるか?」
「はい、そうでございます……。それに堺の知り合いの商人の屋敷に南蛮人が居れば。その者達に尾張へと一緒に連れてきてくれとおねだりするほど、織田の吉姫さまはバテレン好きの南蛮人好きでございます」
あの時俺がトイレの件を誤魔化すために、咄嗟に
『あのうつけ姫は本当にどうしようもない女子で、ごじゃる。まさかあのうつけ姫は、南蛮人の子を身籠り産む気ではござらぬなぁ……? 織田信秀の奴も自分の愛娘が真のおおうつけだから大変で、ごじゃるな、わっ、ははは~』
『……誠、御方様の申される通りで……。いくら織田家が斯波家の家老の家だとして、信秀殿が分家の身……。その姫だとしても織田家は平氏の血を引く神官の流れをくむ由緒正しい一族なのに、南蛮の男へと媚びへつらい、その身を任せようとするのは本当に呆れた者で御座います。あっ、ははは』と。
中世的な思想家の爺二人ならば、
そう俺が日本の映画やドラマで見たストリー通りに悪態をつくと思っていた。
でも俺が阿保だからついついと
「織田のうつけ姫は、かなりの
今川の親父さまは言葉だけ聞けば、お○ゃる丸の変態爺に見えるけれど。自分の目を細め、鋭い目つきで、俺を威嚇しながら脅すように尋ねてきた。
「えっ! あっ! はい。御方様の危惧されている通りでございます……」
俺は
◇◇◇
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