第18話 えっ! まだ三国同盟をしていないの? (2)

「ぼ、僕は……」


 最初は、あの時の俺は、中身がアラサー年齢だろうが。流石東海道一の弓取と世間さまに称えられ、他の戦国大名にも恐れられている今川の麻呂爺の眼力! 威圧! 圧力に押され、恥ずかしながら、自分の身を縮めてしまった。俺の腹部の下にある大事な物もな……。


 まあ、それぐらい今川の親父殿は、志○健さんのバカ殿さまのように、冗談抜きで面白く、自分の顔を白に塗りたくり、歯の方もお歯黒で本当にギャグみたいな使用をしているけれど。

 あの時の俺は今川の親父殿が怖くて声が中々声が出ずに下を向くけれど。俺は意を決して、自分の顔を上げ──!


「雪斎和尚さまの提案に対して僕は意を唱えたいと思います!」


 俺はたかが10歳、9歳、8歳ぐらいの分際でさ、天下に名高い日本の軍師さまの一人であるの今川の親父様への提案を良くない、悪いもの、拒否だと告げた。


 でも今川の親父さまは「竹千代、そちは麻呂に何の事を言ってごじゃるか?」と○じゃる丸のように可愛いのならばいいのだが。

 あの爺の顔の白塗り、お歯黒は本当にキモイだけなのに、可愛く首を傾げてきたのだ。


 そう俺が余りに年齢が低く、一応は他の戦国大名達に知られてはいけない、重大な軍事作戦をまだ小学生ぐらいの年齢である俺が……。それも太原雪斎和尚の提案に対して意見をしているとは、あのクソ爺も流石に気がつくことができずに、自分の首を気持ち悪く傾げた。


 しかし、流石俺の師だ! 雪斎和尚は俺の言った意味を直ぐに、あの禿げ頭をクルクルと回転させて。


「竹千代殿が御方様に申し上げたいのは儂が提案している武田と北条との同盟の件かのぅ~?」


 雪斎和尚は自分の白い髭を触りつつ、考える人になりながらあの時のチビな俺に尋ねてきた。


「は、はい! そうです! 雪斎和尚様!」


 俺は今川の親父さまから正座のままで、雪斎和尚へと顔の向き、身体の向きを変え、元気よく返事をして頷いてみせた。


 だから普通はここで、今川の親父さまと雪斎和尚はチビな俺に対して、何故貴様は、そんな大事なことを知っているのだ? と尋ねることもしないで。


「……でッ、竹千代、お主は、雪斎和尚の代わりに麻呂へと何を提案したい訳じゃ?」


 今川の親父さまは俺がガキであろうとも容赦しないで、ジィ~! と俺の瞳を見詰めながら、重たい口調で脅すように尋ねてきた。


 もうそれこそ? ガキのお遊びみたいな提案ならば、俺の首を跳ねるからな! とでも言いたいような目と瞳と顔で尋ねてきた。


 だから俺は雪斎和尚から今川の親父さまへと身体の向きを変え、爺と目を合わすと「ゴクリ!」だ。

 俺は自分の喉を鳴らすほど今川の親父さまの気迫に押されビビリ緊張するけれど。


 あっ、ははは~と何故かあの時の俺に吉の笑い声が聞こえたような気がする? それもあいつが俺のことを侮り、嘲笑う時の高笑いが聞こえたような気がするから。


 そう俺は織田信長豊臣秀吉に復讐をしてやりたいと、今も思っているから。あの時の俺も吉の嘲笑いを思い出し、我に返り、今川の親父さまの目をジィ~! と見詰め──眼光を弾き返しながら自分の口を開いていくのだった。





 ◇◇◇






 甲相駿三国同盟(こうそうすんさんごくどうめい)」とは、天文23年(1554)


 天文16年(1547)8月

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