第19話 未来人の俺的な考え方は? (1)

「……では御方さま、自分なりの考えを言わせていただきます……」


 あの時の俺は先ず、今川の親父さまに対して口を開くと、ガキなりにちゃんと、時代劇の真似をしながらカッコ好く、深々と頭を下げ一礼をした。


「うむ」


 今川の親父さま、俺の凛々しい姿を見て頷き、話を聞いてやると無言で告げてきた。


 だから俺は意を決して息を吸えば、自分の口を開き。


「雪斎和尚さまの提案……。我が今川家と武田家、北条家との三家の同盟の件に関しては大変に素晴らしい提案だと僕も思います」と告げ。


 俺はちらりと雪斎和尚を見てみれば禿和尚は、ふっ、ふ、ふ~ん、どうじゃ~。この小童が~。儂の御方さまに提示した策は凄いだろう~! とでも言いたい、ドヤ顔をしているのが確認できた。


 でも直ぐに俺は、う~ん、雪斎和尚……。何だか可哀想だなと思う?


 だってガキの俺に今から爺さんが出した提案は否定される訳だからと。俺は雪斎和尚さまに対して同情をしながら、今川の親父さまへとまた自分の口を開き。


「……ですが僕は、武田信玄公は情や義理、人情に欠ける方だと思います」


 俺はクソガキの分際で大人……。


 それも天下に名を轟かせ、恐れられているを名指しして蔑み、侮る台詞を大の大人二人……。


 それもやはり天下に名を轟かすと世の謳われた、西の大内氏でなければ天下人にさも近いのは今川義元公だろうと言われている爺と、禿の爺さん……。


 そう今川家に太原雪斎ありと、世の戦国大名達に一目置かれ、恐れられている禿げた坊さんの爺……。


 この太原雪斎和尚がまだ生きてさえいえれば、織田信長公の飛躍──昇竜は無い……。


 桶狭間で今川義元公が討ち死にすることは先ず無かっただろうと、死を惜しまれた天下に名を轟かす軍師さまへと告げるから。爺二人は仲良く俺のことをジロリと睨んできた。


 しかしだ、俺は、生前は地方の小さな食品加工会社の営業をしていて、世の販売元──。量販店さんの方もC国、K国贔屓が多くて、俺が勤めているような売り上げも余り多くない中小企業は国からの援助も受けることができないから、道の駅やお土産屋さんの問屋さんへと飛び込みで営業をすることも多かった。


 だから俺は爺二人の睨みに怯え、怯むこともしないで、自分の脳裏で俺は時期に天下の大将軍……。征夷大将軍になる男……。途中でリタイアする爺二人に怯えてどうするのだと言い聞かせる。


 そう俺は自分に頑張れと𠮟咤激励しながら二人の事を見詰め。



「……実際信玄公は固い同盟を結んでいたはずの、義理の兄弟とも言える立場の、諏訪頼重公との同盟をあっさりと破棄して諏訪家を滅ぼしました……」と真剣な顔で爺二人へと説明をした。


 そして俺はニヤリと爺二人へと微笑むと。


「……でも今のこの時代は足利幕府の衰退と共に京の都も荒れ。世の民はこの戦乱を止めてくれる英雄を待ち望んでいる中……。その中に誰がなるのかを争っている群雄割拠の戦乱の時代でございますから。自らの意思で、自分を鬼にしてでも同盟を破棄し、衰弱してきている国へと、早き如き勢いで攻め込むことは自体は悪いことではなく。僕自身もよくある出来事だと思います。だから諏訪家との同盟をあっさりと破棄されて攻め込んだ武田信玄公の臨機応変振りには、僕自身も見習うものがあると思いましたが」と、爺二人に笑いながら告げる。


「ほう」


 爺二人は仲良く声を揃え、俺の話に耳を傾け関心をしてくれた……と同時に、爺二人の目つきが当然のように変わる……。


 そう、この俺さまを見る目に鋭さが増し、とても幼子を見る目ではなくなり。こいつまさか将来的には、我が今川家に謀反を起こし、この駿府を手に入れるつもりでいるのではないか? と言った猜疑心の目を爺二人は俺に向けるけれど。

 俺自身もこの話をすれば爺二人が、いくら俺がガキであろうと猜疑心のある目で見て、今後警戒をする可能性が大だ! とは思っていた。


 でも俺は自分を捨て豊臣秀吉になびいた織田信長に復讐をしてやりたい思いがあるのと。

 俺、徳川家康は今川の親父さんとは歴史的にみても相性がいいはずだと思っている。


 だって今川義元公は俺の前世の記憶……。諸説ではあるけれど。竹千代はこの今川館の廊下で、爺の目の付く位置で当てつけ、がましく豪快に立ちシ〇ン──。


 まあ、し〇んべん小僧へと化した竹千代の豪胆さに今川義元公は呆れる訳ではなく、感服して気に入り、将来は大物になるに違いないと目をかけ、太原雪斎和尚さまの許で学ばせ、自分と血の繋がりのある姪の瀬名……。築山殿を養女として俺の嫁にだすなどして、今川の親父殿は身内衆に加えるほど。この俺さまのことを高く評価し、気に入った。


 そして禿爺こと太原雪斎和尚も俺のことを高く評価した一人なのだ。




(お願い)


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