第31話 まだ終わっていないでごじゃる(6)
「竹千代?」
「……何でございましょうか、御方さま?」
「お主が先程麻呂へと話してくれた種子島の連射武術や種子島の大型化した大筒の採用を検討しているのは織田信秀ではなく、うつけ姫だと申したな?」
「はい、そうです」
あの時俺が流石に、爺二人と兄ちゃん達に、そんなに遠くではない未来……。
そう織田信長と呼ばれる英雄を中心に、一気に加速する時代の流れの中……。中世的で閉鎖的な思考の三人には少しばかり難しかっただろうから、やはりするべきではなかったかも知れないな? と。
俺は今川の親父さまの様子を上目遣いでチラチラと窺っていると声をかけられたので言葉を返せば。
「あのうつけ姫は時期に我が今川家が武田との戦に破れ、この東海道は晴信の物になり、あのうつけ姫は麻呂と対峙する訳ではなく、晴信との戦……。その対処方を今の内から事ある毎に策を練っていると言う事なのでごじゃるか、竹千代? 麻呂に隠さないで言ってみるでごじゃる」
今川の親父さまは、織田の親父さまではなく、
「……ん? どうでしょう? 僕も織田の姫さまから、そこまで詳しく教えてもらった訳ではございませんからよくわかりませんが。今川家は御方さまと太原雪斎和尚さまが健在ならば僕も武田晴信公は安易に駿府への南下作戦は起こさないと思いますから。犬山城経由からの武田の進軍を恐れた防御作戦かも知れません」
はぁ、はぁ~と俺は頭を深々と下げながらまた今川の親父さまへと嘘偽りを告げた。
「ふむ~、その手もありますな、御方さま……。晴信殿が京へと上がる手段と海路と塩を得る手立ては……。晴信殿は御方さまとの激戦を避け、弱小の斯波氏や織田家を直接狙えば良いだけで御座いますから……。竹千代殿は本当に賢い。良い武将になられますぞ御方様、良かったですな。これならば御方様、今川家も安泰で御座います」
かっ、かかか……と太原雪斎和尚が意味深に高笑いを浮かべるから。
「うむ、じゃ、のぅ」
今川の親父さまは、自分のことを笑う雪斎和尚に対して怪訝な表情をする訳ではなく、ホッとした顔……。安堵するから、あの時の俺は? ? ? と困惑しながら首を傾げた記憶がある。
でッ、俺が二人の会話を見て聞き、武士の兄ちゃんと二人仲良く困惑していると。
「竹千代」とまた今川の親父さまがまた呼ぶから。
「は、御方さま、何でしょうか?」
俺もまた首を傾げたと思う?
「先程お主が麻呂に説明をした武器を大量に用意ができれば、そなたはこの今川を武田晴信から守る事は可能か?」
俺が首を傾げ困惑していると今川の親父さまは大変に恐ろしいことを……。
そう、あの野戦の天才である武田信玄公に俺が戦で勝利をすることは可能か? と冗談ではなく本気の顔……。東海道一の弓取りと言われた
だから俺、徳川家康は「えっ!」と驚嘆してしまった。
◇◇◇
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