雪忘花

　雪深い町の児童養護施設で暮らす主人公の新奈。だが、彼女は雪の日にこの町の人々が記憶をなくしてしまうことに気づいてしまった。どこかかみ合わない歯車のような日常の中で主人公はこの施設の大きな謎に迫っていく――。
　繊細な筆致で描かれるまるでファンタジーの世界のような美しい情景、夢のような世界で始まるが、徐々に話がうねり出しサスペンス溢れるドラマチックな展開となっていく。
　少年少女の冒険に胸が高鳴る、読み応えのある上質のSFでした。
　

　主人公の少女は、雪が降ると周りの人々が記憶を失ってしまう不思議な村で暮らしています。幼い頃から、自分だけが忘れられる孤独に苦しんできました。それでも、親友で恋人の沙羅の存在が、少女の心の支えになっているのが伝わってきます。

　二人の柔らかな会話やスキンシップを通して、少女の沙羅への愛情が感じられ、読んでいてほっこりします。一方で、雪への恐怖心や周囲の偏見に悩まされる様子もリアルに描かれています。

　冬の白い景色や、少女の儚くも美しい心情が繊細に表現されており、これから先の展開が気になる作品です。雪解けとともに、二人の恋も実を結んでいってほしいですね。

このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む（319文字）

最高でした。素晴らしい作品を感謝いたします。冒頭からの美しい描写に感動し、途中はバードボックスのようなスリルのある展開。さらには二つの次元と生死が織りなす複雑な設定が衝撃的です。このような高度で幻想的なストーリを考えつかれたことに敬服します。最初の数話を読んでその描写の美しさに感動した時に想像したよりも何倍も深くて心に残る作品でした。私がこれまで読んだベストのSF作品の一つになりました。

　この村には、冬にだけ咲く白い可憐な花があった。そして、この村の人々は冬になり、雪が降ると記憶をなくしてしまう。例えそれが自分の子どもであっても、雪が降れば忘れてしまうのだ。村人たちはその記憶障害を、妖精の悪戯だと信じていた。そして、存在を否定された子供たちのために、ある施設があった。
　その施設に預けられた主人公の少女は、例外的に雪が降っても記憶をなくすことはなかった。そんな主人公の恋人でありルームメイトである少女は、皆と同じように記憶をなくしてしまう。主人公は忘れられていく記憶と共に置き去りにされ、深い孤独と戦っていた。しかし、そんな生活の中、ある青年が記憶に関わる告白をしたことから、主…続きを読む

このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む（132文字）

この作品を読んでいて、日本語ってこんなに美しいんだ……と思わされる、圧倒的な表現力です。
「小説」と言うよりは「文学作品」だと思いました。
静謐で白と灰色に覆われた、だけどどこか暖かい。
ミステリアスで各エピソード毎の引きも効いているので、そこも文学的でありながらエンタメっぽい面白さが充分にある良作だと思います。

雪が降るたびに記憶をなくす不思議な村を舞台に、一人周囲とは異なり違和感を持ち続ける主人公・新奈。
彼女だけが覚えている記憶が、この村の異常さを静かに浮き上がらせてゆきます。

SF？ミステリー？

切々と語られる美しい情景とはうらはらに謎が次々と深まり、主人公をとりまく周囲の不穏さが徐々に増してゆきます。

まだ11話の序盤ですが、先が気になって仕方ありません。