第15話

「またいつでも遊びにおいでね。私はいつでも大歓迎だから」


 頷きながら自然と笑みが溢れていた。あれから百合亜さんとは一時間程喋り、初対面とは思えない程に居心地のいい空気が漂う中に私は身も心も預けていた。ふと壁に掛けられている時計に視線を送ると時刻は十八時前だったので、「すみません、今日はもう時間なので帰ります」と言った。帰り際、お腹も重いだろうしほんとにここで大丈夫ですので、と何度も私は言ったが、「私がお見送りしたいんだから止めないで」と百合亜さんは笑顔を溢した。


「それじゃあ。失礼します」と頭を下げて互いに手を振り合って、百合亜さんから背を向けた。でも、それからすぐに身体を元の方に戻した。


「あの、ほんとにまた来てもいいですか?」


 心からの声だった。また来たい、と思っていた。百合亜さんが醸し出す空気感も、話しながら時折溢す笑顔も、その全てが凍りついていた私の心を温めてくれた。何よりも、私は百合亜さんに、自分自身の母の姿を重ねていた。


「えぇ、勿論よ。いつでもいらっしゃい」


 頬を緩ませた百合亜さんの顔をみてから、私は小さく頭をさげ、今度こそ帰路についた。門に辿り着いて、目を見開いた。門を隔てた向こうには、沙羅が立っていた。

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