悲しくて、辛い…
俺は、美麗を見送ってから部屋に戻ってきた。
まだ、6時過ぎなのに、帰宅すると恋は起きていた。
「早くないか?」
「寝れないんだ。一人だと」
そう言って、恋は泣いていた。
「ごめん、朝飯買いに行ったから」
俺の言葉に恋は、首を左右に振った。
「飴ちゃんのせいじゃないから。いつも、これぐらいに紗綾が出て行ってたから癖なの」
やっぱり、恋は俺に似てる。
「そうか…。味噌汁飲むか?」
「うん」
俺は、キッチンでお湯を沸かす。
「美麗君、まだいたんでしょ?」
「いたよ」
「飴ちゃん、どうすんの?」
恋の言葉に、俺は「やってるとこ、見せろって言われた」と呟いた。
「じゃあ、京君だね」
恋は、俺の言葉に迷わずそう言った。
「俺は、やってるとこ、見せたくなんかない」
そう言った瞬間俺の目から涙がボトボトと流れ落ちる。
「飴ちゃん、泣かないで」
そう言って、恋は俺を見つめていた。
ピーってお湯が沸く音がして火を止める。
俺は、味噌汁にお湯をいれた。
味噌汁を持って行くと恋は、俺にこう言った。
「飴ちゃん、食事美味しくなかったんでしょ?美麗君に会うまで」
そう言いながら、恋はコンビニの袋からサンドウィッチやおにぎりを出していた。
「何で、わかるんだ?」
俺の言葉に恋は、俺を見つめながら、「私も同じだったから…」と呟いた。
そして、深呼吸をすると話し出した。
「中学卒業と同時に親に捨てられて、街をさ迷ってる時にスカウトされて、高校行かせてもらったのに、半年後彼女作ってDVと薬。そんな生活を、4年半続けてクビ宣告受けてママに出会ったのが20歳の時。そっから、3年後。20歳の紗綾が、うちの店に来た」
そう言って、味噌汁を開けて、恋は混ぜ出した。
「紗綾は、ママに人生相談してたんだ。で、気づいたら仲良くなってて風鈴で飲んで、気づいたら抱いてた。アハハ」
そう言って、恋は泣きながら笑っていた。
「そうか」
「で、紗綾と付き合ってからご飯食べるの美味しくなったの、凄く。今までは、ご飯食べても味しなかったし、生きるために詰め込んで飲み込んでそんな生活だった。飴ちゃんも同じでしょ?」
そう言いながら、恋はおにぎりを開封する。俺には、恋の気持ちが手に取るようにわかった。
「そうだったな」
俺は、サンドウィッチを開けて食べ始める。
「そうそう、闇落ちしたら、あっちでは、キラキラ輝くよね」
そう言いながら、恋はテレビをつける。
つけた瞬間、新しい映画の宣伝に笹森梓が現れた。
「プライベートが酷い程、キラキラしてるな。笹森梓も綺麗だな。憂いを帯びて、セクシーだな」
俺は、テレビにうつる笹森梓を見ながら恋に言った。
「でしょ?エロを感じるよね。奥底から醸し出されてる。エロ」
そう言って、恋は嬉しそうに笑った。
「氷室とは違うな」
俺は、隣にいる氷室を指差して恋に言った。
「あれは、ただの遊び人でしょ?遊び人と、本気で惚れた相手に捨てられた人は、醸し出す雰囲気が違うらしいよ。社長が言ってた」
「確かにな。妙にそそる」
「だよね」
恋は、笹森梓を見ながら、泣きながら味噌汁を飲んでいた。
「飴ちゃん、演技でもいいから抱いた人には感じてる声出してもらいなよ」
「オホッ、ゴホッ」
「大丈夫?」
「うん。なんで?」
「絶望にうちひしがれた
って、恋は笑った。
「見たのか?紗綾ちゃんの事」
「見たよ。女の子抱きながら。すごく、惹きつけられた。悲しいぐらいに紗綾は綺麗だった。そのお別れから二日後に出た生放送で、紗綾は人気急上昇したの」
「テレビ、見てたのか?」
「見てたよ。時々紗綾がうつるとね。その姿が、めちゃくちゃ綺麗なんだよ。今にもポキッと折れそうな感じで必死で立ってる姿が、すごくセクシーで綺麗で、惹きつけられた」
「そうか」
「でもね、紗綾が売れていくの嬉しいのに悲しくて辛くて死にたくなるんだ。死んだら、紗綾悲しんでくれるかな?」
「当たり前だろ」
「飴ちゃんも、同じでしょ?」
「なぁ、恋。飯食ったら連れて行きたい場所あるんだけど、来ないか?」
「いくよ」
「そう言えば、恋ってクマ凄いよな」
俺は、恋の顔を覗き込んだ。
「薬物してる人に間違われるから素っぴんはNGなんです」
そう言って、恋は小さく口元でバツを作った。
「なんだ、それ」
「ハハハ。飴ちゃんといるの楽だね。何か、何でも話せるし受け止めてもらえる」
「俺も、楽だよ」
サンドウィッチの美味しさを美麗に教えてもらったのに、美麗がいないと
俺は、コーヒーで、サンドウィッチを流し込んだ。
美麗は、俺が他の奴を抱いてんの見てスッキリすんのかな。
「自信があるんだよね。紗綾も美麗君も…。愛されてる自信。だから、他の人を抱けないって思ってるんだよ」
「そうだな」
恋にそう言われて気づいた。俺が、美麗を愛してるから他の奴を抱けないって思ってるから美麗はお願いしてきたんだ。
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