連絡

ブー、ブー、ブー


「飴ちゃん、スマホ鳴ってる」


寺ちゃんに言われて、俺は慌てて電話に出た。


「もしもし、ハリーさん。歳なんだから飲みすぎたら駄目だって」


『……。飴君』


「夏生さん……」


俺は、その声に固まっていた。


『観月が、さっきやってきてね…。ハリーさんが逃げてるらしいんだ』


「何でですか?」


『よくわからないんだ。観月が宗方の弟とハリーさんを会わしに言ったんだよ。それが、CJビルなんだ。宗方の弟が、ハリーさんと二人で話たいと言ったみたいで。観月は、帰宅したらしくて』


夏生さんは、そう言いながら何度も深呼吸をしている。


俺は、言葉を必死で考えてる。


けど……。


うまく言葉にならなくて……。


『飴君、聞こえてる?』


「は、はい」


『観月が、もう一度ビルに行ったら警察が来ていたらしい。警察は、宗方真と針山龍之介を探しているみたいなんだ』


「それを何で夏生さんが……」


『昔、馴染みの知り合いが警察関係者にいてね。観月が、その人から聞いてきたんだ』


スマホを持つ手が、ガタガタ震えてるのがわかる。


「意識不明の人物って?」


俺は、夏生さんに尋ねる。


『神楽法だよ』


その言葉に、驚いてスマホを落としそうになった。


夏生さんは、続けてこう話した。


『飴君、ニュースに取り上げられてない話が一つあるんだ』


「何ですか?」


『神楽の倒れていた場所に、ラムネが大量に散らばっていたらしい。末端価格は、五億……』


俺は、夏生さんの言葉に、歯がガチガチと言い出した。


その音が、頭を響くのを感じていた。


夏生さんが、泣いてるのがわかる。


『私は、今ハリーさんの居場所を観月に探してもらっているから……。飴君も、行きそうな場所があるなら探してくれないか?』


「罪が重くなりますよね……」


『そうだろうね。逃げているから……』


夏生さんの言葉に、俺は涙を止められなくて……。


『飴君、また連絡する』


「はい」


プー、プー、プー


電話が切れて、俺は寺ちゃん、美麗、京君を見つめていた。


「ハリーさんが、宗方の弟と逃げてる」


『えっ?』


美麗と寺ちゃんは、驚いた顔で俺を見つめていた。


「京君、刺されたのは神楽だって」


「本当に言ってるんですか?」


「ああ」


京君は、何でって顔をしていた。


「俺は、ハリーさんを探しに行く」


「針山さんを?」


「このまま逃げると罪が重くなるかもしれないから……」


「そんな……」


美麗は、ボロボロと泣き出している。


「何か、協力しようか?飴ちゃん」


俺は、寺ちゃんの言葉に首を左右に振った。


「どうして?」


「寺ちゃんと美麗は、仕事をしてくれ。ハリーさんが、悲しむ」


「針山さんを放って仕事なんか出来るわけないよ」


「甘ったれんな!」


俺は、美麗に怒った。


「飴ちゃん……」


「美麗、お前をここまで連れてきたのは、ハリーさんだ。お前は、第二の佐古さんになるんだ。だから、どんなに苦しくても悲しくても、ちゃんと仕事をするんだ」


「飴ちゃん!そんなの無理だよ。針山さんが、心配なんだよ」


俺は、美麗の頬に震える手を当てる。


「俺がちゃんと見つけるから……。だから、何も心配するな」


「わかったよ、飴ちゃん」


美麗は、そう言って俺の手を握りしめる。


「寺ちゃん、美麗を頼むよ」


「わかった」


そう言うと寺ちゃんは美麗を連れて行く。


美麗は、俺からそっと手を離した。


「飴ちゃん、ハリーさんを宜しく」


「ああ」


「じゃあね、飴ちゃん」


「頑張れよ」


美麗と寺ちゃんが出て行った。


俺は、京君と向き合った。


「飴さん」


「ごめんね。せっかく来てくれたのに……」


「そんなのいいんです。だけど、何でほう先輩が?」


「交渉が決裂したのかもな」


「だから、刺したって事ですよね?」


「多分な……。本当の事はハリーさんを見つけなくちゃ聞けないな」


俺の言葉に、京君は俺の両手を自分の両手で

包み込むように握りしめてくれる。


「飴さんには、針山さんって方がいる場所がわかるんですね……」


「わからないけど。そこに行かなくちゃ行けない気がしてるんだ」


「わかりました」


京君は、俺から手を離した。


「ごめんね、京君」


「いえ、一緒に出ます」


「うん」


俺は、京君と一緒に家を出た。


「飴さん、大丈夫ですか?」


「ありがとう、京君」


俺達が、マンションの下についた時だった。


「あのさー、人殺し」


そう言って、そいつは俺と京君を血走った目で見つめていた。








*この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません*

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