聞かされたメッセージ
「京君、俺の後ろにいて……」
「飴さん」
「大丈夫だから……」
俺は、そう言って京君を後ろにやる。
「雨宮さん、約束が違うよね?」
そこにいたのは、
目が血走っていて、ピントが定まっていない。
崇拝していた、
こないだまでの余裕はなさそうだった。
目の前にいる宗方は、いつでも人を殺してしまいそうな雰囲気を醸し出していた。
「約束が、違うって?」
俺の言葉に、宗方はイライラしながら近づいてきた。
「ふざけるな!あんたは、俺に約束しただろうが……」
俺の胸ぐらを、宗方はイライラしながら掴んできた。
「約束は守るつもりだった……」
俺は、宗方の血走った目を見つめていた。
「はあ?嘘をつくなら、もうちょとましな嘘をつけよ」
そう言うと宗方は、俺から手を離した。
自分のズボンのポケットに手を入れて、スマホを取り出した。
そして、何かを再生した。
『道理、はぁ、はぁ。俺、今、刺された。はぁ。はぁ。雨宮の知り合いだとか言うおっさんと……が来て……金を払うから……ラムネを……道理、はぁ、はぁ。雨宮……にはめられた……』
それは、神楽の刺された後の電話のようだった。
でも、時々痛みなのか声が小さくなるせいで宗方の弟がいる事やラムネをどうされたのか全く聞き取る事は、出来なかった。
「朝起きたら、法から留守電が入っていた」
今の電話が、録音じゃなくて、留守電だったのがわかった。
「そうか……」
「そうかじゃねーぞ。お前が、知り合いのおっさんに頼んで、法を殺せて頼んだんだろ?」
宗方は、そう言いながら泣き出した。
神楽という崇めていた存在を失いかけている事に、酷く混乱しているようだった。
「そんな事は、頼んでいない」
「嘘をつくな!」
「嘘ではない……」
こんな不毛なやり取りをずっと続けている暇は、今の俺にはなかった。
「宗方、気になるなら弟に連絡してみろ!」
「はあ?今、真の話関係ないだろうが?」
宗方の言葉に、俺は首を横に振った。
「関係あるんだよ」
俺の言葉に、宗方は驚くのではなく。まさかという表情を浮かべる。
「心当たりがあるんだな!」
そういうと宗方は、スマホを握りしめて誰かに電話し始める。
「真が出ない……」
どうやら、弟にかけていたようだった。
「ここで、俺に絡んでる暇があったら……。罪が重くなる前に、弟を見つけ出して自首させるべきじゃないか?俺は、そうしようと思っている」
宗方は、俺の言葉に俺を睨み付ける。
「真がやったって言うのか?」
「俺は、その場に居たわけじゃないから何も知らない。ただ、一つだけ言えるのは警察は宗方真と俺の知り合いを探している」
宗方は、やっぱりなって納得したような顔を浮かべている。
「知っていたのか?」
俺が、そういうと宗方は、「フッ」と鼻で笑ってから、俺から距離を開けて煙草に火をつける。
「真は、法が嫌いだった。特に、法が作る作品が大嫌いだった」
そう言いながら、宗方は、ポケットから携帯灰皿を取り出した。
「雨宮さんの言葉が真実なら、法をあの場所におびき寄せたのは真かもしれないな」
そう言って、宗方は煙草を消した。
宗方は、さっきよりも目の焦点が俺にハッキリとあった。
「真を探すよ」
「そうするべきだな」
宗方は、俺の言葉に「じゃあ」と手を上げて立ち去って行った。
宗方が見えなくなると、京君は俺に後ろから抱きついてきた。
「怖かったか?」
俺は、腰に回された京君の手を優しく撫でながら話していた。
「飴さんが、刺されちゃったらどうしようって怖かった」
「確かに、最初の時の宗方はヤバそうだったな」
「はい」
京君は、そう言いながら俺をギュッーと抱き締めてくれる。
「刺されても怖くはなかったよ」
「飴さん……」
「京君が守れるなら、それでよかった。それと、京君が救急車呼んでくれるって信じてたから……」
俺は、そう言うと京君の手をのけてから向き合った。
「飴さん……」
「京君、この事が落ち着いたら、またそうしようか……」
「いいんですか?」
「当たり前だろ?俺は、京君と約束したんだから……」
京君は、俺の言葉に照れくさそうに笑っていた。
ちゃんと京君の傷を拭って、京君が新しい人と幸せになるのを見届けたい。
俺は、無言で京君を引き寄せて抱き締めていた。
「飴さん……」
「全部終わったら……」
「はい」
京君は、俺の背中に手を回してくれる。
俺達は、しばらく抱き合っていた。
*この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません*
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