京君の話

京君は、甘いカフェオレを飲んで話し出した。京君が、深呼吸して話始める。俺は、恋の時のようにゆっくり目を閉じて聞く。


京君の話ー


暴力、薬物、痴漢、複数プレイ…


僕は、やっと解放された気がした。


だるような夏の暑さの中。


トボトボと体を引きずるように歩く。


幻覚、幻聴…。


止めどなく襲ってきた快感を思い出すと吐き気がした。


あの交わりを覚えたら、次からは気持ちよくないと言われた。


ほう先輩は、僕を支配し破滅させる事を楽しんだ。


親からの愛を与えられずに育った僕にとって、先輩のそれは紛れもなく愛だった。


ただ、1ヶ月前。


突然、飽きたと捨てられたのだ。


先輩にとっての新しい玩具が、出来たのはわかりきっていたのだ。


捨てられたうえに、時々やってくるフラッシュバック…。


きついな。


これで、生きているのは正直きつい。


どうせなら、綺麗な場所で死にたい。


幻想的に広がるひまわり畑にやってきていた。


このまま、ここにずっと居たら死ねるかな?


嫌、海にでも行こうかな…。


「あの、写真撮ってもらっていいですか?」


白髪交じりのおじさんが、僕に話しかけた。


「あっ、はい」


おじさんとひまわりとの写真を撮った。


「一人なので、助かりました」


そう言って、おじさんは笑った。


「お時間ありますか?」


「はい」


「では、写真を撮っていただいたお礼をしたいのですが…」


「お礼なんていりません。」


「そんなわけにはいかないですよ」


そう言って、おじさんは、僕を車に乗せてどこかに連れていく。


bar風鈴についた。


「どうぞ、どうぞ」


そう言って、おじさんは扉を開けた。


エアコンのスイッチを押して、コーヒーをいれて持ってきてくれる。


「冷蔵庫で抽出させて作ってるんですよ」


笑いながら、僕の前にコーヒーを置く。


「喧嘩ですか?」


「いえ」


痣ができた瞼や頬、Tシャツから覗く腕の痣に、おじさんが言ってきたのがわかった。


「そうですか…。無理はしないで下さいね」


そう言いながらコーヒーを飲む。


「君は、何歳ですか?」


「18歳です。5日経ったら19ですが」


「自分の人生を終わらすんですね」


おじさんにそう言われて、僕は、驚いた顔を向けた。


「息子が生きてたら、今の君と同じぐらいだったな。ひまわりが大好きだった。16歳の夏、亡くなりました。君は、息子があの日見せていた顔にとても似ている。私は、風鈴を移転させたばかりでね。家族に構う時間がとれなくてね。いつもなら気づける息子の異変にさえ気づけなかった」


そう言って、おじさんは泣いてる。


「昔から、大切な人ができたら全力で守ると決めていたから…。結婚してから、些細な変化にでも気づける人間でいたのに…。息子を守れなかった。娘と妻は、息子の事で自分を責め続ける私に愛想をつかし出ていった」


僕は、おじさんの悲しそうな顔を見ている事しか出来なかった。


「何があったかは、わからないが…。生きるのをやめるなら、ここで働いてからにしてみないか?」


「えっ?」


「ここには、沢山の人が来る。自分の悩みがちっぽけに感じる程の悩みを持つ人に出会う事もある。色んな人の人生にれてから終わらせてみればいいんじゃないか?」


そう言われて、僕は頷いていた。


この日、この人に、僕の人生を捧げようと決めた。


それから、マスターに全てを打ち明けた。

マスターは、僕の人生の為に全力でぶつかると約束してくれた。


現在ー


俺は、ゆっくりと目を開ける。


「それが、マスターとの出会いです。」


そう言って京君が笑った。


「素敵な話だね。俺も、京君に出会えてよかったよ」


「飴さんに、そう言われて嬉しいです」


そう言って、京君は耳まで真っ赤に染めてる。


「誰ともそうならないのは、薬物のせい?」


「はい、あの日先輩に言われました。あの快感を忘れる事は、一生ないと…。だから、僕は怖くてしていません」


「きっと、別だと思うよ。快楽だけが全てではないと思うから…」


俺は、京君に笑った。


俺は、夏生さんが、教えてくれた事を京君に届けたくなった。


京君にその想いがどうか届きますように…。


そう祈りながら京君を見つめていた。







*この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません*

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