お見合い?!

俺は、いつの間にか眠っていた。目が覚めると、隣に京君はいなかった。


当たり前だよな。


いいって言ってたけど、嫌に決まってるよな。


何故だか、京君がいなくて、少し寂しい気持ちになった。


ガチャ…と玄関の扉が開いた。


コンビニ袋を下げた、京君が俺を見ている。


「飴さん、起きてたんですね」


京君は、驚いた顔をしている。


「おはよう」


「鍵借りました。朝御飯、買ってきました」


「ありがとう」


俺は、京君が戻ってきてくれた事に何故だかホッとしていた。


京君は、机の上にコンビニの袋を置いた。


京君は、耳まで真っ赤にしていて俺と目が合うのが照れくさそうに笑う。


「飴さん、おにぎりとサンドウィッチとパンと適当に買ってきましたので食べてくださいね」


そう言って、京君は、笑ってくれる。


「ああ、ありがとう」


俺は、おにぎりを手に取った。


京君は、サンドウィッチを手に取ってる。


「コーヒーも何種類か買いました」


「ありがとう」


そう言われて、俺は、微糖を手に取った。


今日は、ブラックの気分ではなかったのだ。


「昨日の話だけど、無理はしないで欲しい」


俺の言葉に、京君は少し驚いた顔をした。


「僕は、大丈夫ですよ。飴さんの力になりたいです」


そう言って、京君は笑ってくれる。


「ありがとう、でもその事が京君の負担になるのならやめてもかまわないから。無理なら無理とその時に言ってくれないか?」


「わかりました」


京君は、サンドウィッチを食べながら甘いカフェオレを開けた。


「そういえば、京君の年齢を聞いてなかったね。何歳?」


「僕は、29歳です」


「風鈴では、どれくらい働いてるの?」


「今年で10年目です」


「男の人もいけるって気づいたのはいつか聞いてもいいのかな?」


「はい、大丈夫ですよ」


まるで、お見合いのように俺は、京君に質問する。


でも、俺は京君の事が知りたかったのだ。


ちゃんと理解をしたかった。


「14歳の冬休み、部活の先輩に襲われたのがキッカケでした。それを、嫌だと思わなかったってのが、理由です。まぁ、それから数々の人に襲われるのですがね」


「それは、なぜ?」


「先輩が、僕がそういうのが好きな人間だと言ったんです。大人になってもずっと先輩は、僕の人生を苦しめました」


「今は、もう会っていないの?」


「ヤバイ事をしているって話です。マスターに言われて、関係を経ちました。先輩は、僕の人生を破滅させる事が楽しかったようです」


そう言って、京君は寂しそうに笑った。


「先輩の名前を聞いてもいい?」


神楽法かぐらほうです。両親が共に弁護士で、真面目で厳しい家庭に育った先輩は…。1ミリもそのレールから降りることは許されなかった。だから、僕を破滅させて楽しんでいました。もう時効だから話しますが…」


そう言って、京君の目から涙が流れる。


「18歳の時に、先輩が僕を玩具にする為に薬を使っていました。ラリると、痛みより快感が強くなる。恥ずかしさより、欲望が勝つ。沢山の人の目にさらされても、快感が走る。薬が抜けた後のしんどさと絶望感は、何度同じ事をされてもかわることなどありませんでした」


そう言って京君は、サンドウィッチを噛る。


「当時流行っていた薬物の名前は、チョコでした。チョコレートのような甘さをもっていて、舌の上にのせると溶けていくんです。約半年間使われました」


「よくやめられたね」


「そうですね。僕の場合、やる時にだけ使用されていたので…。大丈夫だったのかもしれません。それでも、幻覚や幻聴には時折悩まされましたよ。もう、生きるのも諦めてしまおうと思った時にマスターに拾われました」


そう言って、京君が笑った。



「詳しく聞いてもいいかな?」


俺が話すと京君は、柔らかい表情にかわった。


「勿論ですよ。マスターとの出会いは、僕の人生をかえましたから」と京君は言った。


俺は、コーヒーを飲んだ。


京君は、懐かしそうに微笑みながらマスターとの出会いを話してくれる。








*この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません*

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