京君と飲む
京君は、仕事を上がる。
「マスター、お先に失礼します」
「ああ、また明日な」
そう言って、俺と一緒に店を出る。
「どこで飲みますか?」
「どこでも、構わないよ」
俺の言葉に京君は優しく笑う。
京君は、人懐っこさを持っていて可愛らしい少年だと思った。
「飴さんの家で、飲めませんか?」
「歩くと少し遠いよ」
「大丈夫ですよ。こうやって、飴さんと歩いていたいので」
そう言って京君が笑ってくれると何だかくすぐったくなる。
「飴さんの彼氏はどんな人ですか?」
京君の言葉に、俺は美麗を思い出しながら話す。
「優しくて、綺麗な人だよ。俺には、勿体ないぐらいの人」
「そうなんですね」
京君は、俯いて歩き出す。
「危ないよ」
酔っぱらいが、京君にぶつかって来そうになって俺は手を引っ張った。
「あっ、すみません」
「大丈夫?」
「はい」
京君は、耳まで真っ赤に顔を染めあげた。
俺は、気づいてないふりをしながら、京君と、並んで歩く。
「飴さん、手を繋いだら怒りますか?」
「いや、怒らないよ」
俺は、京君の手を握ってあげる。
「ありがとう、飴さん」
「ああ」
俺と京君は、俺の家の近くのコンビニに寄ってお酒やおつまみを買う。
「いつにしますか?」
「見せつけるって話?」
「はい」
京君は、また耳まで真っ赤に染めてる。
「来週は、どうかな?」
「俺は、いつでも大丈夫です」
家に帰ると部屋に京君をあげる。
ソファーに、二人で並んで座った。
「京君は、抵抗がないって言ってたよね?」
「あっ、はい」
「どんな人と付き合ってきたの?」
「そうですね」
そう言って、京君はビールを飲みだした。
「僕は、今まで変態プレーと呼ばれる類いをさせられてきました。それが、普通だと思っていました。ただ、マスターに出会った日に言われました。京君は、愛されてるわけではなく、玩具にされてるだけだと…」
「そうなんだね」
「はい、男女合わせてのプレー、人の前でする事、殴られること、今では、詳しく話せば涙がでるほどの体験にかわりました」
俺は、涙を流す京君の頬に手をあてた。
「飴さん」
「今は、誰にも抱かれていないの?」
「はい、していません」
「怖いの?」
「はい、怖いです」
京君の潤んだ瞳がゆらゆらと揺れている。
「だったら、あの話は…」
「いえ、やります」
そう言って、京君は笑った。
「なぜ?」
「飴さんとの交わりは、極上な気がするからです」
そう言って、京君は、俺の頬を撫でてくれる。
「そんなわけないよ」
「いえ、初めて飴さんに会った時からわかっていました。この人は、優しいキスをして、相手を思うエッチをする人だろうなって」
そう言って、京君は微笑んだ。
「俺は、そんな立派な人間じゃないよ」
「僕は、たくさんの人を風鈴で見てきました。なので、目は、確かですよ」
「そんな風に、言い切られると、した時に違うって思われないかな」
俺は、京君の頬から手を離しビールを飲んだ。
「恋ちゃんも、優しいキスやエッチをする人だと感じていました。
そう言って、京君はニコニコと微笑んでいる。
「恋は、確かにそんな感じがするね。美空さんとは、その後どうなったのかな?」
「美空さんとは、一度きりでした。恋ちゃんに抱かれ続けると他にはいけないが美空さんの答えでした。僕は、飴さんとたった一度でもそうなれるならば、他にいけなくても構いません」
京君のその目は、真剣だった。
あの日の美麗みたいだった。
5年前ー
「そろそろ、飴ちゃん。抱いてよ」
「無理だ」
「付き合って、9か月だよ。俺は、いつでもいいんだよ」
「他の人に戻れなくなったらどうする?」
「俺は、構わないよ。飴ちゃんを知って、誰も抱けなくなるのならそれで構わない」
現在ー
「それは、駄目だよ」
「それでも構わないから、お願いします」
そう言って、京君は俺を見つめる。その目を見ていると断る事は、出来なかった。
「わかった。それなら、来週連絡するよ」
「わかりました」
俺と京君は、ビールを飲んだ。
本当に、京君を利用していいのだろうか?
本当に…。
でも、京君にも幸せを感じる交わりを感じてもらいたいのも事実だった。
京君は、ソファーにもたれて眠っていた。
俺は、京君を見つめていた。
*この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません*
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